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【抗議声明】国際協力銀行(JBIC)及び民間銀行は豪州バロッサガス田開発事業への融資決定を撤回せよ

投稿日:2021年12月27日

2021年12月27日

【抗議声明】国際協力銀行(JBIC)及び民間銀行は豪州バロッサガス田開発事業への融資決定を撤回せよ

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGO 350.org Japan
メコン・ウォッチ

12月27日、政府出資100%の公的金融機関である国際協力銀行(JBIC)がオーストラリアのバロッサガス田開発事業に関して346百万米ドル限度の貸付契約を24日に締結したことを発表した(※1)。同融資は民間銀行との協調融資により実施されるもので、協調融資総額は497百万米ドルに上る。私たち環境NGOは、本事業がパリ協定の1.5度目標に整合せず、世界の気候変動対策に逆行したものである上、「先住民族の権利に関する国連宣言」等で定められている影響を受ける先住民族の「十分な情報が提供された上での自由な事前の合意(FPIC)」が得られていないことから、JBIC及び民間銀行の融資決定に強く抗議する。

2021年5月に国際エネルギー機関(IEA)が発表した報告書「Net Zero by 2050, A Roadmap for the Global Energy Sector」(※2)によれば、2050年までにネットゼロを達成するには新規の化石燃料採掘事業へのファイナンスを即時に停止する必要があるとしている。つまり、バロッサガス田のようなガス採掘事業を新たに開発する余地はない。11月に開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)でも、化石燃料事業の停止を加速していく必要性などが取り上げられた。

国際的なシンクタンクのエネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)によれば、バロッサガス田は他のオーストラリアのガス田と比較して単位当たりの炭素排出量が最も多い事業であり(※4)、仮に炭素回収貯留(CCS)設備を設置したとしても約3割の排出抑制しか達成できないと推計されている(※5)。したがって、融資銀行及び事業者のネットゼロ目標(※6)の達成を大きく阻害する可能性が高い事業であると言える。ガスは石炭と同様に座礁資産リスクを抱え、そのスピードは石炭よりも早くなるとも言われている(※7)。

また、バロッサガス田からのパイプラインは、ティウィ諸島の先住民族であるTiwi族が生活を営んできた地域からわずか6kmの距離に設置されるため、海洋環境、生計手段、文化など先住民族への影響が懸念されている。「先住民族の権利に関する国連宣言」等では、影響を受ける先住民族の「十分な情報が提供された上での自由な事前の合意(FPIC)」を得ることが国際水準となっており、FPICを取得していないことは、『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン』及び民間銀行が採択している「エクエーター原則」にも違反している。本事業では先住民族との協議すらほとんど行われていない状況が明らかとなっており、人権の観点からも大いに問題である。

Tiwi族のAntonia Burke氏は「ここでどんな事業を行うのか誰も知らせてくれなかった。Tiwiとの協議を全く行わずに事業を行うのは大きなリスクになる」と発言している。また、Marie Munkara氏は「JBIC及び日本政府はバロッサガス田事業に反対する私たちの声を聴くべきだ」と表明している。他にも多くのTiwiの人々が事業への懸念や反対の声を上げている。

私たちは融資を決定したJBIC及び民間銀行に対し、同事業への融資決定の即時撤回を強く求めるとともに、事業者であるJERA(東京電力フュエル&パワー及び中部電力の合弁)に対しても同事業から撤退するよう強く求める。

脚注
※1:https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2021/1227-015708.html
※2:https://www.iea.org/reports/net-zero-by-2050
※3:https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2021/pdf/1028-015365_1.pdf
https://www.unepfi.org/net-zero-banking/members/
※4:https://ieefa.org/wp-content/uploads/2021/03/Should-Santos-Proposed-Barossa-Gas-Backfill-for-the-Darwin-LNG-Facility-Proceed-to-Development_March-2021.pdf
※5:https://ieefa.org/wp-content/uploads/2021/10/How-To-Save-the-Barossa-Project-From-Itself_October-2021_3.pdf
※6:https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2021/1028-015365.html
https://www.jera.co.jp/corporate/zeroemission
※7:https://ieefa.org/stranded-asset-risks-for-gas-investments-climbing-quickly/

本件に関するお問合せ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝
tanabe@jacses.org

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