開発と援助

豪バロッサガス田開発事業における住民勝訴判決を受けてのJBIC対応に関する公開質問状を提出

投稿日:2023年01月11日

2023年1月11日

財務大臣 鈴木俊一様
国際協力銀行総裁 林信光様

豪バロッサガス田開発事業における住民勝訴判決を受けてのJBIC対応
に関する公開質問状

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ

国際協力銀行(JBIC)が支援中の豪州バロッサ・ガス田開発事業において、先住民族の代表者が住民協議や海洋生物への影響緩和策が不十分であるとして豪州の環境当局を訴えていた裁判で、2022年12月2日、連邦裁判所は政府側の控訴を棄却しました。これを受けて、上記4団体は、同日に「NGO共同声明:JBIC融資・JERA出資の豪ガス開発事業で先住民族が勝訴~JBICは直ちに融資契約の破棄を~」(※1)を発表し、「JBICは当事業の融資契約の破棄を直ちに行うべきである。また、このような事態が二度と生じないよう、融資検討においてNGOや専門家等の第三者を含めた助言委員会を設置すること等、審査能力及び説明責任の強化策を講じるべきである」との要請をJBICに送付し、JBICの今後の対応について回答を求めました。

これに対して2022年12月16日、JBICより以下の返答を電子メールで受けました(一部抜粋):

本行としては、今回の二審判決を受け、事業者および豪州当局に関する情報を収集し、事実関係や今後の対応方針について確認を進めており、今後も借入人を通じ、事業者及び豪州当局の対応を適時にモニタリングしていく所存でございます。

その上で、環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドラインに規定するとおり、「借入人は、環境社会配慮に関する問題が生じた場合には、プロジェクト実施主体者と当該プロジェクトに関わるステークホルダーとの間での協議が行われるよう努力すること」、 また、「借入人は、環境社会配慮に関し、借入人以外のプロジェクト実施主体者及び相手国政府の役割が重要である場合は、これらの者も含めて取り決め等を結ぶよう努力すること」に向け、適切な配慮が行われるよう、事業者に働きかけていく所存でございます。

しかし、このような対応は『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン』(以下、JBICガイドライン)から逸脱しています。JBICガイドラインでは「プロジェクトは、プロジェクトの実施地における政府(国政府及び地方政府を含む)が定めている環境社会配慮に関する法令、基準を遵守しなければならない」と定められています。また、「借入人やプロジェクト実施主体者が、本ガイドラインに基づき当行が要求する事項を満たしていないことが明らかになった場合、あるいは、環境レビューに際して借入人等より正しい情報が提供されなかったことにより環境に望ましくない影響が及ぶことが出融資等の実施後に明らかになった場合に、当行は、出融資契約に基づき、貸付等の実行を停止し、または借入人に期限前償還を求めることがあること」を出融資契約等に反映することが要件となっており、その実施が求められています。したがって、JBICは、単にプロジェクト実施主体者とステークホルダーとの適切な対話や合意を促すだけでは不適切であり、JBICガイドラインに則った対応を行う必要があります。また、財務省はJBICの監督官庁として、JBICガイドラインの適切な実施を確保する必要があります。

そこで、以下の点を財務省及びJBICに質問します。

  1. 本事業は裁判の結果、現段階で法令違反の状態となったと理解しているが(上告の期限である2023年1月3日までに上告は行われていない)、財務省及びJBICの解釈を教えて頂きたい。
  2. 本事業は「本ガイドラインに基づき当行が要求する事項を満たしていないことが明らかになった場合」及び「借入人等より正しい情報が提供されなかったことにより環境に望ましくない影響が及ぶことが出融資等の実施後に明らかになった場合」の両者に該当すると考えられるが、財務省及びJBICの解釈を教えて頂きたい。
  3. 上記に該当する場合、「貸付等の実行を停止し、または借入人に期限前償還を求める」必要があると考えるが、財務省及びJBICの見解を教えて頂きたい。仮に借入人から要請があった場合、JBICは違反状態が解消するまで貸付実行は行わないという理解でよいか。
  4. 貸付実行停止等の対応を取らない場合、法令違反の状況にもかかわらず借入人がJBICからの融資を受けたり、借入人が誤った情報を提供しているにもかかわらずJBICからの融資を受けたりすることを容認することになり、モラルハザードを引き起こすことにもなると思うが、財務省及びJBICの見解を教えて頂きたい。
  5. 今回のような事態が二度と生じないようにするための再発防止策については、どのような対策を検討しているか。NGOや専門家等の第三者を含めた助言委員会を設置することについての財務省及びJBICの見解を教えて頂きたい。

 

※1:https://sekitan.jp/jbic/2022/12/02/5694

本件に関するお問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、担当:田辺
tanabe@jacses.org

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