石炭事業への保険引き受け方針等に関する世界の大手保険会社ランキング2019を発表
当センターも加盟している環境NGOの国際ネットワーク「Unfriend Coalキャンペーン(※1)」が世界の大手保険会社30社の気候変動・脱石炭への取り組みに関するランキングを発表した。結果、アリアンツ、アクサ、スイス再保険、ミュンヘン再保険、チャブ、QBEなど石炭関連事業への保険引き受けを停止/制限する方針を掲げた保険会社が上位を占める一方で、同様の方針を持っていない日本の大手損害保険会社である東京海上、MS&AD、SOMPOは最下位となった(表1参照)。
石炭関連事業への保険引き受けを停止/制限する方針を掲げた保険会社は17社(ランキング対象は14社)になり、これらの保険会社は一次損害保険市場の9.5%、再保険市場の46.4%を占めることになった。2018年11月時点で方針を掲げていた保険会社は欧州の7社だったが、この1年間にアメリカや豪州の企業を含め10社が新たに方針を掲げ、保険会社による脱石炭の動きが拡大していることが明らかとなった(図1参照)。
図1:過去3年間の石炭事業への保険引き受け方針の変化とマーケットシェア(左:石炭引き受け停止を表明した保険会社数、中央:一次保険市場のマーケットシェア、右:再保険市場のマーケットシェア)
一方で、日本の大手損害保険会社である東京海上、MS&AD、SOMPOは石炭関連事業への保険引き受けを継続しており、脱石炭の方針は掲げていない。日本では2018年の台風や洪水による被害増加に伴い、保険金支払いが増加した結果、2019年10月から損保各社の保険料が6~7%値上がりした。2019年夏の台風被害によりさらに保険金支払いが増加し、2021年1月に保険料の5%程度の再値上げが検討されている。日本の損害保険会社は気候変動によって経営に深刻なダメージを受けているとみられるが、一方で気候変動を深刻化させる石炭関連事業への保険引き受けを継続していることは、自ら損害保険ビジネスの持続性を損ねていることになる。
Unfriend Coalキャンペーンでは、パリ協定の長期目標との整合性を確保するために、東京海上、MS&AD、SOMPOを含む世界の大手保険会社に対して、石炭事業及び石炭関連企業への保険引き受けや投融資を停止するよう求めている。
※1:Unfriend Coalキャンペーンは保険会社に対して石炭事業への引き受けや投融資を停止するよう求める国際キャンペーンで、2017年より毎年ランキングを発表している。NGO13団体が参加しており、日本からはJACSESが参加している。詳しくは、https://unfriendcoal.com/を参照。