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提言:ADB民間セクター業務にインスペクション政策の適用を!

ADBの業務には、政府に貸付を行う「公的セクター業務」(Public Sector Operations)の他に、政府保証をつけずに民間企業に直接貸付・出資などを行う「民間セクター業務」(Private Sector Operations) があります。現在、民間セクター業務はADBの融資総額の10%未満にすぎませんが、民間セクターはADBのみでなく開発機関において、これからますます援助の名のもとに利用強化されていくセクターであると考えます。

しかし、ADBはこれまでのインスペクション政策に、民間セクター業務を適用してきませんでした。つまりこれは、民間セクタープロジェクトからの影響や問題については、住民の異議を無視することを意味しています。今後このセクターに対し、「インスペクション機能」のように市民の声を反映する機能を確保させることは大変重要であり、また緊急な任務であると考えます。

以上から、私たちはADBのインスペクション政策に民間セクター業務を対象に含め、これと同時に、民間セクター業務における情報公開政策の改善と、環境・社会審査を含む業務手続きの明瞭化を求める必要があると考えています。

ADBはインスペクション政策の見直しに関する第1次ドラフト(ワーキングペーパー)を5月に発表し、数ヵ所でコンサルテーション(東京では6月11日)を行っております。さらに7月末に第2次ドラフトを発表しましたが、民間セクター業務に関してはほとんど記述が変わっておりません。

ADB内では、民間セクター業務について何らかの形での適用が検討されている様ですが、「公的セクター業務とまったく同じものではなく」、「簡素化した」機能が示唆されており、公的セクター業務と比べてインスペクション機能のレベルが下げられてしまう可能性があります。特に、内部的には、民間セクター業務局(Private Sector Operations Department)からの抵抗があるとも聞きます。したがって、民間セクター業務にインスペクション政策が効果的に適用されるように、市民社会から声を挙げる必要があると判断しました。

NGO声明
ADBインスペクション政策における民間セクター業務の適用を求める提言

2002年8月29日 東京

私たち、世界中のNGOは、現在のインスペクション政策(1995年)において、民間セクター業務が適用されていないことを強く懸念しております。ADBが本政策の改訂を行うに当たり、私たちは、民間セクター業務に対し、公的セクター業務と同等の、政策遵守および問題解決のアカウンタビリティーメカニズムを要求します。同時に、民間セクター業務においてインスペクション政策を適切に機能させるために、民間セクター業務の情報公開の改善と環境・社会審査の明瞭化を要求します。

ADBのワーキングペーパーの第二ドラフト(2002年7月31日)「Review of the Inspection Function」では、第一ドラフト(2002年5月3日)と同様、影響を被る住民たちよりも民間企業およびADBの利益を保護することを正当化するために、民間セクター業務におけるインスペクション政策の適用に関する様々な懸念が強調されているように見受けられます。例えば、ビジネス機密性の保護、ADBの影響力やレバレッジの小ささ、プロジェクトの遅延・不確実性の拡大、プロジェクトスポンサーのコスト増、借入者がコスト増や不確実性のために他の投資先を探すことによるビジネス機会の減少、対抗企業によるビジネス戦略としての乱用の可能性などです。しかし、これらの懸念がADBのアカウンタビリティーの基準を弱めていいという理由にはまったくなりません。

ドナー国政府から出資を受ける公的機関であるADBは、民間セクター業務を含めたADB自身の貸付等の業務すべてによって被害を受ける住民、およびドナー国政府に対し、アカウンタビリティーを確保しなくてはなりません。民間セクター業務において、ADBが政策の遵守を審査し、プロジェクトによる環境・社会への被害を住民が訴える機能を拒否することに私たちは断固として反対します。

また、現在のADBによる、民間セクターに特有な致命的に制限された情報公開政策、および業務指針(Operations Manual)における不明瞭な環境・社会審査の手続きといった障害を取り除かなければ、民間セクター業務におけるインスペクション機能が公的セクター業務と同等に機能しないことを私たちはたいへん憂慮しております。

以上から、私たちは以下のことを要求します。


1.すべての民間セクター業務に公的セクター業務と同等のインスペクション政策を適用すること


上記の第二ドラフトでは、民間セクター業務に対しては、公的セクター業務と異なる、あるいはより簡素化されたインスペクション機能をADBが希望している事が示唆されています。 しかし、政策遵守を確保し、プロジェクト地域における被害を防ぐためには、民間セクター業務のインスペクション政策が公的セクター業務と同等でなくてはならず、特別な緩和措置および配慮によって民間セクター業務のアカウンタビリティが弱められてはなりません。また第2ドラフトにおいて、民間セクター業務に関してはオンブスパーソン機能の適用というオプションの可能性が検討されていますが、私たちは民間セクター業務に関し、政策の遵守を審査するアカウンタビリティ機能および問題解決のオンブズパーソン機能の両方の適用を求めます。

また、民間セクター業務プロジェクトに関し、プロジェクトスポンサーの合意なしにADBがプロジェクトを停止できないと規定してしまうことに、大きな懸念を抱きます。環境・社会に対しあまりにも影響の甚だしいプロジェクトに関してさえ、ADBが及ぼし得る影響力を制限してしまうからです。

また、ADBの役割およびレバレッジに関わらず、民間セクター業務のうち、出資業務を含むすべてのADBの民間セクター業務上の融資において、積極的にADBの社会・環境配慮に対する責任を認識し、アカウンタビリティーを確保することを私たちは強く求めます。


2.インスペクションへの訴訟を可能とするために時宜を得た必要な情報を公開すること

現在ADBでは、民間セクター業務における情報公開に際して、民間スポンサーのビジネス保護のために彼等による合意が前提とされています。しかし、プロジェクト等の基礎情報を有するPP(Project Profiles)およびRRP(Report and Recommendation to the President)は、プロジェクトサイクルのより早い段階での問題解決を促進するために、絶対に必要です。さもなければ、被害を受ける住民はインスペクションに訴訟を行うために必要な情報を得る手段さえないこととなります。

もし、何らかの情報を機密にすることが不可避なのであれば、その不可避である理由も添えて、機密箇所のみを除いたその他すべての情報をPPとRRPで公開するべきです。もし、このような情報公開が現在の情報公開政策と相反するならば、政策および業務指針において適切な修正を行わなくてはなりません。

現在、公的セクター業務において、PPはプロジェクト形成段階である国別援助計画(CAP)、もしくは案件承認の初期段階であるコンセプトクリアランス後に公開され、RRPは理事会での承認後開示されるのと対照的に、民間セクターにおいては民間スポンサーの同意を得たとしても、PPはローンプロセスの最終段階(少なくとも理事会の30日前)までなされず、また、RRPは開示された事がありません。ADBにおいて、民間セクター業務特有の手続き・特徴を考慮するとしても、民間セクター業務においては、現在以上により早い段階での情報開示が必要です。


3. 業務手順を明確にすること

現在のADBの業務指針は、全般的に手順が不明瞭であることや、最新の政策との不一致が問題ですが、特に民間セクター業務に関する不明瞭さは顕著です。現在の業務指針は、公的セクター業務を中心に記述してあり、環境・社会配慮を含む民間セクター業務の業務手順が、公的セクター業務とどのように異なり、どのように一致しているかが明確でありません。また、民間セクター業務に関する記述には、あまりにも柔軟な解釈を許容してしまう表現が多く見られ、業務手順およびその遵守の必要レベルが曖昧です。これらは、政策の遵守を問いただすインスペクション機能における基準そのものを妨害するものです。

ADBは業務指針において、インスペクションが適切に機能するように、民間セクター業務の手順をより明確化する必要があります。業務マニュアルが改定される際、特に民間セクターに注意を払い、全てのセクションにおいて公的セクター業務との違いを明記し、業務手順を明確化することを求めます。

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