開発と援助

東京海上の大株主である金融機関50社に対し石炭火力発電への保険引受の全面停止に向けたエンゲージメントを求める要請書を送付

投稿日:2021年07月14日

環境NGO5団体が東京海上の大株主である金融機関50社に対し、石炭火力発電への保険引受の全面停止に向けたエンゲージメントを求める要請書を送付しました。詳細は以下の要請書本文をご覧ください。

【要請書本文】

2021年7月14日

東京海上HD株主の皆様

東京海上に対して石炭火力発電への保険引受の全面停止に向けた
エンゲージメントを求める要請書

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGO 350.org Japan
メコン・ウォッチ

6月28日、東京海上ホールディングス株式会社(以下、東京海上)の年次株主総会が開催されました。日本の環境NGOスタッフも株主として参加し、同社の気候変動対策について質問しました。しかし、同社経営陣からの回答は、十分な科学的根拠に基づいておらず、非常に不適切なものでした。そこで、この度、東京海上の大株主である金融機関50社の皆様に、同社に対して石炭火力発電への保険引受の全面停止に向けたエンゲージメントをお願いしたく、本要請書をお送りさせて頂きます。

6月25日、日本の大手損害保険会社の一つで、東京海上のライバル企業でもあるMS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社(以下、MS&AD)が、今後計画される石炭火力発電への保険引受について、例外規定をなくし、引受を全面停止する方針(※1)を発表しました。東京海上の株主総会では、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、プログラム・ディレクターの田辺有輝より、「MS&ADの新方針発表を受けて、東京海上は同様の方針を発表する予定はあるか」と質問しました。東京海上の経営陣からは、2020年9月の方針(※2)策定以降、石炭火力発電事業への保険引受件数はゼロであるが、日本政府のエネルギー政策上は、石炭火力発電の建設を禁止していないため、現行方針上の例外規定は維持するとの回答がありました。

また、350.org Japan代表の横山隆美より、「本日の株主総会資料にはパリ協定という言葉が見られないが、東京海上はパリ協定の長期目標に整合的なビジネス展開を行っているか」との質問を行いました。東京海上の経営陣からは、東京海上は日本政府の2030年までに2013年比で温室効果ガスを46%削減する目標に準拠しているため、パリ協定の長期目標と整合的である、との回答がありました。

株主総会会場の外では、東京海上に新規石炭火力発電への引受全面停止を求めて、環境NGOによるアクションが行われました。世界の保険会社に対して化石燃料関連事業への引き受けや投融資を停止するよう求める国際キャンペーン、Insure Our Future は、株主総会に向けてこれまでにキャンペーンサイト(※3)の立ち上げ、東京海上のグループCEOに対する公開書簡(※4)の送付、そしてフィナンシャル・タイムズ紙への全面広告(※5)の掲載などを行なってきました。

また、日本政府の46%削減目標は、パリ協定の1.5度目標と整合的ではないと指摘(※7)されており、仮に、日本政府の削減目標に準拠していたとしても、パリ協定と整合的とは言えません。さらに、東京海上の収入保険料の33.3%は海外事業が生み出しており(※8)、仮に日本政府の国内削減目標に準拠していたとしても、不十分です。

5月18日に国際エネルギー機関(IEA)が発表した報告書「Net Zero by 2050, A Roadmap for the Global Energy Sector」によれば、新規の化石燃料採掘事業は行うべきではなく、発電セクターにおいては世界全体で2040年に排出量をネットゼロにする必要があります(※6)。したがって、2050年ネットゼロを達成するためには、石炭火力発電のみならず、新規の化石燃料採掘と石油・ガスを含めた新規の化石燃料発電に対する保険の引受による支援は出来ないことになります。世界では、すでに28の大手保険・再保険会社が石炭事業への引き受け停止、あるいは制限を表明しており、いまだに石炭事業への引き受けを行なっている東京海上は後れをとっています。

したがって、東京海上の大株主の皆様に対して、保険の引受方針をパリ協定の長期目標と整合的にするために、石炭火力発電を含む新規化石燃料事業への保険引受を停止することを求めて東京海上に対してエンゲージメントを行うよう、要請します。

大変お忙しい中、誠に恐縮ではございますが、ご回答フォームを活用頂き、本要請に対する貴機関の対処方針・ご意見を下記の担当者宛に8月31日までに頂けますよう、よろしくお願い申し上げます。また、上記の点に関して対話をご希望の場合はオンラインで会合を調整することも可能ですので、お知らせ頂けますと幸いです。

※1:https://www.ms-ad-hd.com/ja/news/news_topics/news_topics-20210625/main/0/link/20210625_msad_2050zero2_2.pdf

※2:https://www.tokiomarinehd.com/release_topics/release/l6guv3000000bafl-att/20200928_j.pdf
※3:https://pollutingtheplanet.com/ja/
※4:https://pollutingtheplanet.com/ja/open-letter-to-the-tokio-marine-holdings-group/
※5:https://pollutingtheplanet.com/ja/climate-campaigners-protest-aig-lloyds-of-london-and-tokio-marine-as-coal-insurers-of-last-resort/
※6:International Energy Agency (IEA), (2021), 「Net Zero by 2050, A Roadmap for the Global Energy Sector」, p. 20, https://iea.blob.core.windows.net/assets/0716bb9a-6138-4918-8023-cb24caa47794/NetZeroby2050-ARoadmapfortheGlobalEnergySector.pdf
※7:Climate Action Tracker (CAT), (2021),「日本の1.5°Cベンチマーク ~ 2030 年温暖化対策目標改定への示唆~」, p. 4, https://climateactiontracker.org/documents/849/2021_03_CAT_1.5C-consistent_benchmarks_Japan_NDC-Translation.pdf
※8:p. 37, https://www.tokiomarinehd.com/ir/event/l6guv3000000c5fm-att/2021_Notice_of_Convocation_j.pdf 

本要請書に関するご返答・お問合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
プログラムディレクター 田辺有輝
〒107-0052 東京都港区赤坂1-4-10赤坂三鈴ビル2F
tanabe@jacses.org

添付資料:
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