開発と援助

JBIC債保有50機関に要請書「JBICに対して新規化石燃料事業への融資の停止等を求めるエンゲージメントを行ってください」を送付

投稿日:2024年10月01日

JBIC債保有50機関に以下の要請書「JBICに対して新規化石燃料事業への融資の停止等を求めるエンゲージメントを行ってください」(PDF)を送付しました。

2024年9月30日

JBIC債保有者の皆様

要請書「JBICに対して新規化石燃料事業への融資の停止等を求めるエンゲージメントを行ってください」

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
Oil Change International
Market Forces

日本の政府系金融機関である国際協力銀行(JBIC)は、パリ協定1.5℃目標に反する新規化石燃料事業への多大な支援を継続しています。この度、私たち環境団体は、JBICが発行した債券を保有している金融機関50社に対して、気候危機を回避するために、新規化石燃料事業への融資を停止するためのエンゲージメント等をJBICに行って頂きたく、本要請書を送付します。

日本政府は2022年のG7エルマウ・サミットにて、「​​国家安全保障及び地政学的利益の重要性を認識し、我々は、各国が明確に規定する、地球温暖化に関する摂氏1.5度目標やパリ協定の目標に整合的である限られた状況以外において、排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の公的直接支援の2022年末までの終了にコミット」しました(※1)。しかし、JBICは2023年以降、7件の化石燃料事業への融資契約を締結しており、その融資総額は約33億ドル(日本円相当で4,980億円)にのぼっています。

国際エネルギー機関(IEA)は2023年の報告書「Net Zero Roadmap: A Global Pathway to Keep the 1.5 °C Goal in Reach」(※2)で、2050年までに温室効果ガス(GHG)排出のネットゼロを達成するには、新規の化石燃料採掘を行う余地はないとの2021年報告書の結論を再び示しています。複数のガス事業に対するJBICの融資はパリ協定の1.5度目標に整合しません。

G7コミットメントを満たすためには、支援対象国のエネルギー政策が1.5度目標と整合している必要があります。例えば、メキシコのサン・ルイス・ポトシ及びサラマンカでのガス火力発電事業について、日本政府及びJBICは事業がメキシコのNDC、国家電力開発計画、 メキシコ連邦電力委員会(CFE)の5か年事業計画に整合的であるので問題ないとの趣旨の発言を行っています。しかし、Cimate Analytics(※3)及びClimate Action Tracker(※4)は、メキシコ政府のNDC(国が決定する貢献)は1.5度目標に整合的でないと述べており、日本政府及びJBICの主張は不適切です。スカボローガス田への融資については、同志国オーストラリアからのLNG輸入であるため、エネルギー安全保障の観点から支援すべきだとして、日本政府及びJBICは1.5度目標への整合すら不要だと説明しています。

トラフィギュラ社へのJBIC融資については、融資決定の発表前の2023年12月に複数のメディアが、米国及びスイスの当局がトラフィギュラ社がアンゴラの公務員に対し長年賄賂を渡していたことを告発したと報道した上、融資を締結した同日にブラジルにおける贈賄で米国海外腐敗行為防止法違反が確定しており、2019年3月にOECD理事会にて採択された「公的輸出信用と贈賄に関するOECD理事会勧告」に違反している可能性があります(※5)。

将来的にもJBICは新規化石燃料への融資を継続する可能性が高いです。例えば、同じく日本の政府系金融機関である日本貿易保険(NEXI)が支援を検討しており、大気汚染物質の排出等地域コミュニティに深刻な社会・環境影響をもたらしている米国ルイジアナ州キャメロンLNG拡張事業(※6)や、先住民族の権利に関する国連宣言で求められている影響を受ける先住民族の「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく合意(FPIC)」が確保されていないパプアニューギニア南東部ガルフ州におけるパプアLNG事業(※7)に対して支援の可能性が高まっています。

JBICは2050年までの投融資ポートフォリオのGHG排出量ネットゼロを掲げていますが、2030年の投融資ポートフォリオのGHG削減目標を設定していません。一方で、三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループの日本のメガバンク3行については、各行の目標は1.5度の経路に整合していないものの、2030年の投融資ポートフォリオの削減目標を既に発表しています。JBICは2022年1月以降、グリーンボンドを計3回発行しており、今年10月にも発行する可能性があります。グリーンボンドは発行体のポートフォリオ全体の1.5度整合については求められておらず、JBICが発行するグリーンボンドを投資家が購入した場合、JBICが化石燃料プロジェクトに充当できる資金を拡充してしまう可能性があります。その結果、意図せずしてJBICによる広義のグリーンウォッシュに加担してしまう可能性があります。

つきましては、JBICの債券を保有されている皆様に、JBICに対して以下のエンゲージメントを行い、一定期間を経てこれらが達成されない場合は、JBIC債券からのダイベストメントを行うことを要請します。

パリ協定1.5度目標に不整合な新規化石燃料事業への支援を停止すること
1.5度の経路に整合するJBICの投融資ポートフォリオ排出量の2030年目標を設定・開示すること

大変お忙しい中、誠に恐縮ではございますが、本要請に対する貴機関の対処方針・ご意見をお聞かせ頂きたく、対話の機会(オンライン会合等)を設けて頂くことは可能でしょうか。下記の担当者宛に10月30日までにご都合のよろしい日程を教えて頂けますよう、よろしくお願い申し上げます。また、対話を持つことが難しい場合は書面にてご回答頂けますと幸いです。

本要請書に関するご返答・お問合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝/喜多毬香
tanabe@jacses.org / kita@jacses.org


※1:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100364051.pdf
※2:https://www.iea.org/reports/net-zero-roadmap-a-global-pathway-to-keep-the-15-0c-goal-in-reach
※3:https://1p5ndc-pathways.climateanalytics.org/countries/mexico/
※4:https://climateactiontracker.org/countries/mexico/
※5:https://foejapan.org/issue/20240524/17759/
※6:https://sekitan.jp/jbic/2023/06/29/5781
※7:https://jacses.org/2446/

送付先一覧:
1. Vanguard
2. BlackRock
3. California Public Employees’ Retirement System (CalPERS)
4. Fidelity Investments
5. Capital Group
6. JP Morgan Asset Management
7. Government Pension Fund Global (GPFG)
8. New York State Teachers’ Retirement System (NYSTRS)
9. TIAA
10. Lord, Abbett & Co
11. Florida State Board of Administration (FSBA)
12. State Street
13. Charles Schwab Investment Management, Inc. (Charles Schwab Corp/The)
14. UBS Asset Management
15. Colorado Public Employees’ Retirement Association (Colorado PERA)
16. PIMCO (US)
17. California State Teachers’ Retirement System (CalSTRS)
18. Mellon Investments Corporation
19. Groupe BPCE
20. Reuss Private Group
21. Oregon Public Employees Retirement System
22. HSBC Global Asset Management (UK) Limited (HSBC)
23. Brown Advisory
24. Power Corporation of Canada
25. Schroders
26. Deka Group
27. Abrdn
28. Northern Trust
29. ​​Pacific Century Group
30. Safra Group
31. Aargauische Kantonalbank
32. Voya Financial
33. Minnesota State Board of Investment (MSBI)
34. T. Rowe Price
35. Massachusetts Pension Reserves Investments Management
36. Dimensional Fund Advisors
37. Crédit Agricole
38. Prudential Financial (US)
39. Nomura Asset Management
40. Legal & General
41. Longfellow Investment Management
42. Pension Fund Association for Local Government Officials
43. Equitable Holdings
44. State of Wisconsin Investment Board
45. Fonds de Compensation de la Sécurité Sociale, SICAV-FIS (FDC)
46. Metropolitan Life Insurance Co (US)
47. Zürcher Kantonalbank
48. Franklin Resources
49. Kommunal Landspensjonskasse (KLP)
50. Lazard

  • 出版物

運営サイト

PAGETOP
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
〒107-0052 東京都港区赤坂1-4-10赤坂三鈴ビル2F
Phone: 03-3505-5552 
Fax: 03-3505-5554 
Email: JACSESのメールアドレスです
Copyright © 「環境・持続社会」研究センター(JACSES) All Rights Reserved.