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プレスリリース「化石燃料への保険引受方針等に関する世界の保険会社ランキング2024を発表」

投稿日:2024年12月10日

2024年12月10日

プレスリリース
化石燃料への保険引受方針等に関する世界の保険会社ランキング2024を発表
~日本の保険会社間では東京海上とMS&ADがSOMPOを逆転リード~

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)

環境NGOの国際ネットワーク「Insure Our Futureキャンペーン(※1)」が世界の大手保険会社30社の化石燃料事業への保険引受等に関するランキング2024年版(※2)を発表した。日本の大手損害保険会社では、東京海上ホールディングス株式会社(東京海上)及びMS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社(MS&AD)が同一15位、SOMPOホールディングス株式会社(SOMPO)が17位となった。SOMPOは国内大手3社の中で石炭を主業とする企業への保険引受を制限する方針を最初に発表した保険会社であるものの、前回の調査以降、目標や方針を強化したMS&AD及び東京海上がSOMPOを逆転する結果となった。

全体では、イタリアの保険大手ゼネラリが、LNGターミナルの新設を含む石油・ガス拡張事業の保険引受停止を保険会社として初めて発表したことで、石油・ガスのバリューチェーン全体の保険引受停止を発表した初めての保険会社になり、ドイツのアリアンツを追い抜き首位に躍り出た。本スコアカードの評価対象である30社中25社が石油・ガス事業の保険引受に対して何らかの停止方針を設けており、石油・ガスの採掘事業(上流)については、ロイズ保険市場以外の全ての欧州の大手保険会社11社が新規の保険引受を停止する方針を設けていることが明らかになった。

本ランキングを掲載したレポートでは、損害保険会社の化石燃料事業への引受動向や気候変動に起因する災害への保険支払い動向についても分析している。2023年に損害保険会社上位28社において、気候変動に起因する年間損害額(106億ドル)は、これらの会社が徴収した化石燃料事業の保険料収入(113億ドル)に近づき、15社において保険料収入を上回った。保険会社は、このような損害額の増加負担を一般市民の損害保険の保険料値上げを通じてコミュニティに転嫁することにより、気候変動に起因する災害によって甚大な被害を受けている人々が保険でカバーされない状態が発生している。

日本では、2023年11月にMS&ADが、国内主要取引先のGHG排出量削減を2030年までに2019年度比37%削減する目標を発表し、保険引受ポートフォリオの排出削減に関する中期目標を掲げたアジアで初めての保険会社になった。MS&ADは、37%の削減目標値について、「日本のNDC(国が決定する貢献)における2030年度GHG総排出量目標と2019年度同総排出量確報値から算出」したと述べてるが、Climate Action Trackerは、日本のNDCについてパリ協定の1.5度目標と整合的ではなく不十分であると評価しており(※3)、MS&ADは、今後、この目標を1.5度目標に整合するために最低限必要とする43%(※4)に修正していくことが求められる。また、国内主要取引先のみならず、海外取引先にも対象を拡大する必要がある。

2024年3月には東京海上が、東京海上日動火災保険株式会社においてGHG 高排出セクター60 社を対象に、エンゲージメントを通じて脱炭素計画の策定を求め、脱炭素計画を有していない企業とは取引を行わないとする方針を発表した。しかし、東京海上が発表した新しい方針では、60社に求められている脱炭素化計画の内容について具体的な要件が設定されておらず、パリ協定1.5度目標との整合性が確保されていない(※5)。また、本方針では海外子会社の取引が適用されていない。東京海上は、気候変動の悪化や、環境破壊、人権侵害等の懸念から世界中で批判の声が上がっている東アフリカ原油パイプライン(EACOP)について、保険引受者としての関与が疑われている。すでに大手邦銀3行が同事業と距離をとっており、チューリッヒ、アクサ、アリアンツ、ミュンヘン再保険等保険会社29社が関与を否定している。

SOMPOは2024年6月に、これまで保険引受の停止対象としてきた石炭主業企業の対象を拡大し、同じく引受停止対象であったエネルギー採掘活動の範囲を北極野生生物国家保護区(ANWR)から北極圏監視評価プログラム(AMAP)に拡大した(※6)。しかし、石炭主要企業に策定を求めているGHG削減計画について1.5度目標との整合性は要件としておらず、AMAP域内のノルウェー海でのエネルギー採掘事業の保険を今後も引き受ける余地を残している。SOMPOは、現地から抗議の声が上がっており、FPIC(自由意思による、事前の、十分の十分な情報に基づく合意)が取得されていない米国リオ・グランデLNG事業への保険引受を行ったことが明らかになっている。三井住友銀行、ソシエテ・ジェネラル、クレディ・スイス、チャブは既にリオ・グランデLNGから撤退することを表明している。

東京海上・SOMPO・MS&ADは、包括的な石油・ガス事業の引受停止方針の策定、化石燃料関連企業からの撤退方針の策定と強化、FPIC配慮方針の策定、保険引受ポートフォリオにおけるGHG削減量の目標の策定と強化を早急に行うべきである。

注:
※1:本キャンペーンは保険会社に対して化石燃料関連事業への引受や投融資を停止するよう求める国際キャンペーンで、2017年より毎年ランキングを発表している。JACSES、350.org、The Sunrise Projectを含む、約19の市民団体が参加している。
※2:要旨の日本語版(PDF)は、こちらからダウンロード可
英語版は以下URLからダウンロード可
https://global.insure-our-future.com/scorecard-2024-insurers-climate-losses/
※3:https://climateactiontracker.org/countries/japan/policies-action/
※4:https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg3/
※5:詳細は以下プレスリリースを参照。https://jacses.org/2364/
※6:https://www.sompo-hd.com/csr/system/vision/

本件に関するお問合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝/喜多毬香
tanabe@jacses.org / kita@jacses.org

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