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共同声明:日米首脳会談で推進合意されたアラスカLNG開発は実施不可能

投稿日:2025年02月20日

2025年2月20日

共同声明:
日米首脳会談で推進合意されたアラスカLNG開発は実施不可能
〜日本の大手損保3社は既に北極圏ガス採掘の保険引受を除外〜

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
Oil Change International
国際環境NGO 350.org Japan

2月7日、ワシントンDCで石破茂首相およびドナルド・トランプ大統領の日米首脳会談が開催され、両首脳は日本が米国からLNG(液化天然ガス)の輸入を拡大することで合意し、アラスカ州産の天然ガスを輸出する計画であるアラスカLNGについて、日本との共同事業に向けた協議が進んでいることが明らかになりました。しかし、日本の大手損害保険会社3社の方針では、北極圏の中で行うアラスカLNG事業は保険引受対象から除外されています。したがって、私たち環境NGOは、東京海上、SOMPO、MS&ADに対して3社の方針に従って事業への保険を引き受けないよう要請するとともに、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、国際協力銀行(JBIC)に対して、アラスカLNG事業に融資しないよう求めます。

本事業は、アラスカ州北部のノース・スロープで天然ガスを生産し、南部のニキスキLNG基地までパイプラインで輸送し、天然ガスを液化した後に輸出する事業です。しかし、国際エネルギー機関(IEA)は2023年の報告書「Net Zero Roadmap: A Global Pathway to Keep the 1.5 °C Goal in Reach」(※1)で、2050年までに温室効果ガス排出のネットゼロを達成するには、新規の化石燃料採掘を行う余地はないとの2021年報告書の結論を再び示しました。したがって、アラスカLNGはパリ協定の1.5 °C目標に整合しません。

また、日本企業のLNG取扱量の37%が余剰として海外へ再販売されていることから(※2)、アラスカのみならず米国産LNGの輸入を拡大することが日本のエネルギー安全保障に貢献するという根拠も成立しません。さらに、アラスカLNGはコスト高の懸念があり、資金が集まらず開発が進まないリスクもあります(※3)。

本事業で天然ガスの掘削地とされるノース・スロープは、北極圏野生生物国家保護区(ANWR)の中に位置し、先住民族であるグィッチン族の伝統的生活圏であり、多様な野生動物が生息する手付かずの自然が残る有数の地域です。この地域でのガス採掘は深刻な人権侵害及び環境破壊を及ぼすリスクがあります(※4)。北極圏でのガス採掘は、事故対応技術が完全に確立していません(※5)。

日本の大手損害保険会社である東京海上、SOMPO、MS&ADは、北極圏における石油・ガスの採掘事業に関して、新規の保険引受・投融資を停止する方針を既に掲げており、ノース・スロープも保険引受の対象外です。したがって、東京海上、SOMPO、MS&ADに対して、自社の保険引受に関する方針を遵守し、アラスカLNG事業への保険を引き受けないよう強く求めます。

また、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行については、環境社会配慮を実施する対象の事業に、北極圏でのガス・石油採掘事業及びパイプライン事業を加えていますが、支援の停止には至っていません。メガバンク3行及びJBICに対して化石燃料事業への融資停止の方針化を求めるとともに、アラスカLNG事業への融資契約を締結しないよう強く求めます。

注:
※1:https://www.iea.org/reports/net-zero-roadmap-a-global-pathway-to-keep-the-15-0c-goal-in-reach
※2:https://oilgas-info.jogmec.go.jp/nglng/handling_volume/1010255.html
※3:https://alaskapublic.org/news/2024-12-05/a-new-study-touts-the-economics-of-building-the-alaska-lng-project-but-some-lawmakers-have-doubts
※4:https://earthjustice.org/case/alaska-lng-project
※5:https://www.unii.ac.jp/erina-unp/archive/wp-content/uploads/2014/01/pp11810_tssc.pdf

本件に関する問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝/喜多毬香
tanabe@jacses.org / kita@jacses.org

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