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プレスリリース「12の機関投資家がパプアLNGの環境・人権問題を精査」を発表

投稿日:2025年03月24日

2025年3月24日

プレスリリース:
12の機関投資家がパプアLNGの環境・人権問題を精査

Asian People’s Movement on Debt and Development (APMDD)
BankTrack
Center for Environment Law and Community Rights (CELCOR)
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
Jubilee Australia
Solutions for Our Climate (SFOC)
Urgewald

パプアLNG事業に出資している4事業者(トタル・エナジーズ、エクソンモービル、サントス、エネオス)の上位50社の機関投資家のうち約24%である12社が、市民社会組織(CSOs)が投資家に同事業への注意を呼びかけ、出資企業へのエンゲージメントを求めた共同書簡に回答した(※1)。書簡はパプアLNG事業に関する深刻な懸念を明らかにしたもので、4事業者の機関投資家に宛てたものである。ほとんどの回答は、自社のスチュワードシップ方針に従い、提供された情報を考慮するという内容だった。少なくとも1社は、この問題にもっと積極的に取り組む可能性があることを示唆している(なお、今回、書簡を提出したにもかかわらず返答がなかった機関投資家は下部に記載)。パプアLNG事業は、何度かの延期を経て、2025年中の最終投資決定を目指して進められている。

パプアLNG事業は、パリ協定1.5度目標と整合しないこと、影響を受ける先住民の「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」が欠如していること、事業地域の60種以上が調査されたことがなく生物多様性への深刻なリスクを及ぼすこと、という3つの重大な問題に直面している。かかる状況を受け、すでにオーストラリア・ニュージーランド銀行、BNPパリバ、クレディ・アグリコル等13の銀行が、この事業への融資を行わないことを表明した。2024年には、Fair Finance Guide Japanの報告書でも、このプロジェクトがエクエーター原則、OECDガイドライン、国連のビジネスと人権に関する指導原則を含む多くの国際基準に準拠していないことが明らかになった。

さらに、パプアLNG事業に出資している4社は、2050年までにネットゼロを達成することを目指すとしながらも、新たな化石燃料プロジェクトを開発している(※2〜5)。国際エネルギー機関(IEA)の『Net Zero Roadmap: A Global Pathway to Keep the 1.5 °C Goal in Reach』では、2050年までに温室効果ガス排出のネットゼロを達成するには、新規の化石燃料採掘の余地はないとされていることから、新たな化石燃料事業を開発し続けるのであれば4社がネットゼロを達成することは不可能である。また、4社によって開発されているこれらの新しい化石燃料事業の中には、パプアLNG事業と同様に、先住民族の権利や環境への深刻な影響に関する問題を抱えている。これらのリスクへの対処を怠れば、事業者や資金提供者に対し、訴訟や苦情申立といった措置が取られるリスクが高まる。

もし4社の経営陣がLNG事業の拡張を追求し続けるのであれば、投資家は1.5度目標、先住民族の権利、生物多様性を尊重する姿勢を示すために、4社のリーダーシップを交代させる影響力を行使すべきである。

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)のプログラムディレクターである田辺有輝は、「機関投資家たちのスチュワードシップ・ポリシーに沿ってレターの情報を検討するという回答内容は劇的なものではないかもしれないが、機関投資家の24%による私たちへの回答は、投資家のパプアLNG事業への注目の表れであると私たちは考えている。多くの投資家は、気候変動と生物多様性の危機が、ポートフォリオにもたらす体系的なリスクを認識しつつある。パプアLNG事業は特に気候変動、生物多様性、人権、さらには財務上のリスクに直面しているが、企業がそれらのリスクについて投資家を十分に情報共有していることを示唆するものはほとんど見当たらない」と述べている。

環境法とコミュニティの人権センター(CELCOR)の事務局長であるピーター・ボシップは、「パプアニューギニアは、トタル・エナジーズ、エクソンモービル、サントス、エネオスのような企業が本当に持続可能なエネルギーを提供し、液化天然ガスの採掘から転換して環境と気候の目標を達成しようとするのであれば、彼らが投資できる多様な再生可能エネルギー源を持つ国である。一方、パプアLNG事業はパプアニューギニアのコミュニティにとって、社会的、環境的、気候的に最も悲惨なものである」と述べている。

ジュビリーオーストラリア研究センターの土地と環境正義ディレクターであるショナ・ホークスは、「パプアLNG事業は、地球上で最も気候変動に影響を受けている国のひとつで計画されており、事業計画にはすでに気候変動による災害に見舞われている地域にパイプラインを通すことも含まれている。同時に、パプアLNG事業のターゲット市場であるアジアでは、社会運動が活発化しており、ガス事業に反対し、より安価でクリーンな再生可能エネルギーを求める声が高まっている。その中には、すでにパプアLNG事業に反対する声も含まれている。パプアLNG事業は潜在的なコスト高を抑えようとしているが、事業推進者は世界的なガス過剰供給の最中にパプアLNG事業からのガスが市場に出回るという事実を無視していると指摘する報告もある。パプアLNGは気候、人々、自然にとって明らかに有害であり、投資家にとっても不利益となる十分な理由がある」と述べている。

Asian People’s Movement on Debt and Development(APMDD)のコーディネーターであるリディ・ナクピルは、「パプアLNG事業は、トタル・エナジーズ、エクソンモービル、サントス、エネオスの優先事項におけるすべての問題点を象徴している。すなわち、気候を守ること、生物多様性を保全すること、現地の文化を尊重することよりも、利益の追求を優先しているのだ。アジアはますます深刻化する気候変動の影響に対処しなければならない一方で、これらの企業はガスのさらなる拡大を推し進めている。アジアのコミュニティは、もはやこれ以上のガスやその他の化石燃料を強く拒否している!」と述べている。

本件に関する問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝/本川絢子
tanabe@jacses.org / honkawa@jacses.org

注:
※1:https://jacses.org/en/556/
※2:https://totalenergies.com/company/ambition
※3:https://corporate.exxonmobil.com/-/media/global/files/advancing-climate-solutions/2024/2024-advancing-climate-solutions-report.pdf
※4:https://www.santos.com/sustainability/climate-overview/
※5:https://ssl4.eir-parts.net/doc/5020/ir_material_for_fiscal_ym3/164364/00.pdf

今回返答が来なかった機関投資家一覧:

1. Amundi/Crédit Agricole
2. Argo Investments
3. Asset Management One Co., Ltd.(アセットマネジメントOne株式会社)
4. Bank of America Corp
5. Bank of New York Mellon Corp
6. Blackrock Inc
7. California Public Employees’ Retirement System
8. Capital Group Cos Inc
9. Charles Schwab Corp
10. Commonwealth Superannuation Corporation
11. Dodge & Cox
12. Eurizon Capital S.A.
13. Firetrail Investments Pty Ltd
14. Florida State Board of Administration
15. FMR LLC
16. Franklin Resources Inc
17. Geode Capital Management LLC
18. GQG Partners LLC
19. HUB24 Ltd.
20. Invesco Ltd
21. JPMorgan Chase & Co
22. Kochi Shinkin Bank(高知信用金庫)
23. Legal & General Group PLC
24. Marsh & McLennan Cos Inc
25. Massachusetts Financial Services Co
26. Mellon Investments Corporation
27. Morgan Stanley
28. Nomura Asset Management Co., Ltd.(野村アセットマネジメント株式会社)
29. Northern Trust Corp
30. State Farm Mutual Automobile Insurance
31. State Street Global Advisors
32. Sumitomo Mitsui DS Asset Management Company, Limited(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)
33. T Rowe Price Group Inc
34. TD Asset Management Inc.
35. Tokio Marine Holdings Asset management(東京海上アセットマネジメント株式会社)
36. UBS AG
37. Wellington Management Group LLP

※今回書簡を送付した投資家のうちの1社が、パプアLNGに出資している4社の株主ではないという回答をした。本リリースではエンゲージメントやポリシーに関する返答内容を13機関の内に含めており、当該1社は回答した投資家の数には入れていない。

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