開発と援助

共同声明「JICAはバングラデシュ石炭火力事業の速やかな貸付実行停止と汚職の実態解明を」

投稿日:2025年05月15日

2025年5月15日

共同声明:
JICAはバングラデシュ石炭火力事業の速やかな貸付実行停止と汚職の実態解明を
ーODA案件における巨額横領容疑で現地捜査当局が実施機関幹部を起訴

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ

日本の政府開発援助(ODA)で過去最大規模の約6,710億円を支援中のバングラデシュ・マタバリ超々臨界圧石炭火力発電事業において、現地実施機関の幹部が、バングラデシュ政府汚職防止委員会(ACC)により、巨額横領の容疑で起訴されたと複数の現地メディアが報じた(※1)。現地捜査当局が本事業に係る不正行為について立件した事実を受け、私たち環境NGOは、日本政府及び国際協力機構(JICA)に対して、現地裁判所での判決が確定し、かつ適切な再発防止策が講じられるまで、本事業への貸付実行を停止することを含め、適切な対応を速やかにとるよう要請する。

現地メディアによれば、汚職防止委員会(ACC)の調査によって、マタバリ超々臨界圧石炭火力発電事業の現地実施機関の幹部であるムハンマド・ジャハンギル・アラム氏が、2億9千万タカ(約3億5100万円)を超える財産を横領しており、また、アラム氏が様々な金融機関の94の異なる口座を通して12億7千万タカ(約15億3700万円)を超える不審な取引を行っていたことが判明した。昨年10月には、ダッカ首都控訴裁判所が、アラム氏及びその妻に対して、自身の捜査から逃れるため国外へ出国する可能性があるとして渡航禁止令を発令していた(※2)。

JICAは、マタバリ超々臨界圧石炭火力発電事業に対して2014年6月に最初の貸付契約に調印して以降、計8回、総額約6,710億円の貸付契約を締結してきた。2025年3月の8回目の貸付契約は、汚職容疑の捜査中にも関わらずJICAによって締結された(※3)。発電所の設計・調達・建設は住友商事、東芝、IHIが請け負ってきた。

『国際協力機構環境社会配慮ガイドライン』(ガイドライン)では、支援事業において法令違反等が生じた場合、貸付停止や期限前償還を求めることが可能となっている。これまでも同事業では、塩田やエビの養殖で生計を立てていた多くの住民が失業し、補償支払の遅延や代替住宅提供の遅延などにより地域住民が苦しい生活を強いられるなど、ガイドライン違反が指摘されてきた(※4)。事業実施機関の関係者が横領という不正行為によって巨額の利益を得る一方で、同事業により多くの地域住民が不当に苦しむようなことがあってはならない。

したがって、JICAは現地裁判所での判決が確定し、かつ適切な再発防止策が講じられるまで、本事業への貸付実行を速やかに停止するべきである。また、JICAは公的機関としての説明責任を果たすためにも、本事業における不正行為と日本が拠出したODA資金の関連性を明らかにし、ODA資金の活用が明らかとなった場合は、適切な対応と再発防止策を講じるべきである。


※1:デイリーサンレポート及びbdnews24の関連記事
https://www.daily-sun.com/post/804685
https://bdnews24.com/bangladesh/fad6a49b5916
※2:https://www.dhakatribune.com/bangladesh/corruption/363055/travel-ban-imposed-on-matarbari-power-project
※3:https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_01942.html
※4:
https://jacses.org/%e3%83%9e%e3%82%bf%e3%83%90%e3%83%aa%e7%9f%b3%e7%82%ad%e7%81%ab%e5%8a%9b%e7%99%ba%e9%9b%bb%e4%ba%8b%e6%a5%ad%ef%bc%88%e3%83%90%e3%83%b3%e3%82%b0%e3%83%a9%e3%83%87%e3%82%b7%e3%83%a5%ef%bc%89%e3%81%ae/

本件に関する問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝/喜多毬香
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