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プレスリリース「パプアLNG事業が豪州輸出金融公社の支援対象外に」

投稿日:2025年06月04日

2025年6月4日

プレスリリース:
パプアLNG事業が豪州輸出金融公社の支援対象外に

Center for Environment Law and Community Rights (CELCOR)
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
Jubilee Australia
Reclaim Finance
Solutions for Our Climate (SFOC)
Friends of the Earth United States

2025年6月4日、国内外の環境NGO6団体は、オーストラリアにおける最新の政治動向を踏まえ、オーストラリアの公的金融機関によるパプアLNG事業への資金支援が不可能になったことを明らかにした。パプアLNG事業では、元財務アドバイザーであるクレディ・アグリコルを含め、オーストラリア、フランス、イタリアの主要な銀行13行(※1)が、すでにパプアLNGを支援対象外にしている。最近の政治動向を踏まえ、オーストラリアの輸出信用機関である豪州輸出金融公社(EFA)は支援除外を表明した14番目の金融機関となった。

2024年末、オーストラリア議会は、国際的なクリーンエネルギー移行パートナーシップ(CETP)へのコミットメントを強化する「Future Made in Australia」法を可決した。この法律には化石燃料の除外条項が含まれ、EFAによる国際的な石炭・石油・ガス事業への資金提供を明確に禁止している。本年5月のアルバニージー政権の圧勝による再選は、オーストラリアのCETPへのコミットメントを再確認するものだった。これによりEFAは、パプアLNGへの資金支援を除外しているオーストラリアの主要民間銀行と肩を並べることになる。

近年、パプアニューギニアは、エネルギーアクセスを劇的に改善させており、2030年までに電力供給の最大78%を再生可能エネルギーで賄うことができる再生可能エネルギー開発計画をすでに有している。主な課題は国際的な資金支援を確保することである。

EFAの前身である豪州輸出金融保険公社(EFIC)は、15年以上前にエクソンモービルが主導するPNG LNG事業を支援し、現在も1億豪ドル以上の貸出残高を持っている。同事業は、地域コミュニティの治安悪化、土地所有者への補償支払いの長期的な遅延、貨幣経済への過度な依存など、環境と人権に関する深刻な問題に直面してきた。

トタル・エナジーズが主導するパプアLNG事業は、地球上で最も気候変動の影響を受ける国の一つであるパプアニューギニアの気候正義を損なうものであるとして、現地NGOであるCenter for Environment Law and Community Rights(CELCOR)が問題視している。また、様々な国際基準を遵守していないという懸念も指摘されている。この事業で生産されたガスの95%はアジア各国への輸出が予定されており、Asian People’s Movement on Debt and Development(APMDD)は、アジアのコミュニティもまた気候変動の影響に直面しており、これ以上のガスやその他化石燃料を強く拒絶していると、同事業を批判している。

CELCORのExecutive DirectorであるPeter Bosipは、「人々の命は大切だ……事業の有害な影響が利益をはるかに上回る以上、いかなる金融機関もパプアLNG事業を支援すべきではない」と述べている。

Jubilee Australia Research CentreのLand and Environmental Justice DirectorであるShona Hawkesは、「私たちは、オーストラリア政府のクリーンエネルギー移行パートナーシップへのコミットメントと、FFAによるパプアLNG事業への支援除外方針を歓迎する。パプアLNG事業は気候に悪影響を及ぼし、生物多様性にとっても深刻な影響があり、地域コミュニティがその真のリスクを適切に伝えられている証拠はほとんどない。2020年、カンボジアの農民たちは、民間銀行が融資前に人権リスクに関する様々な証拠を無視したため、オーストラリア国家連絡窓口(ANCP)への苦情申立を通してAustralia and New Zealand Banking Group Limited(ANZ)から多額の補償金を獲得した(※2)。同様に、輸出信用機関や銀行がパプアLNG事業を支援すれば、同事業もまた同様のケースになり得るだろう」と述べている。

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)のプログラムディレクターである田辺有輝は、「日本の輸出信用機関である国際協力銀行(JBIC)もこの事業に資金支援の可能性がある銀行の一つであり、JBICはパプアLNG事業に関してパプアニューギニア政府と会合を持ってきた。日本はG7のメンバーとして、新規化石燃料事業への支援を終了することにコミットしている。従って、JBICはオーストラリアのリーダーシップに倣い、パプアLNG事業への資金支援を除外するべきである」と述べている。

Reclaim FinanceのCampaign CoordinatorであるAntoine Bouheyは、「クリーンエネルギーへの転換にコミットする銀行には、トタル・エナジーズ主導のパプアLNG事業を支援する炭素バジェットは残されていない。EFAはオーストラリアの銀行と共に同事業から手を引くことに誇りを持つべきだ。この事業は、地域コミュニティ、生物多様性、そして世界の気候にとって大惨事となる。世界の気温上昇に対する唯一の責任ある対応は、パプアLNG事業を含む新たな化石燃料事業への支援を中止することであると、他銀行も肝に銘じなければならない」と述べている。

Solutions For Our Climate(SFOC)のConsultant in Public FinanceであるDaniella Chaは、「オーストラリアがパプアLNG事業のような化石燃料事業への融資を除外する気候変動政策を採用し前進している一方で、韓国は遅れをとっている。パリ協定のメンバーであるにも関わらず、韓国は海外での化石燃料の拡大を許容し続けている。パプアLNG事業に対する韓国輸出入銀行(KEXIM)や韓国貿易保険公社(KSURE)からの資金援助の可能性や、大宇建設や現代建設といった韓国企業の関与は、世界的な気候変動の深刻な影響に寄与するだろう。これは、世界という舞台の国際的なコミットメントを損なうだけでなく、気候危機の深刻な影響から、パプアニューギニアのコミュニティをより大きな危険に晒すことになる。アジアにおける再生可能エネルギーの可能性が膨大かつ未開拓である今、アジアにこれ以上のLNG事業は必要ない。韓国は、この事業に資金を提供しようとすることにより、気候変動に関するコミットメントを壊し、パプアニューギニアをより大きなリスクに晒している。韓国の公的金融機関は、海外での化石燃料の拡大に融資する代わりに、クリーンエネルギーへの移行に資金と努力を注ぐべきである」と述べている。

Friends of the Earth United StatesのEconomic Policy Deputy DirectorであるKate DeAngelisは、「オーストラリアが気候変動に関するコミットメントに真剣に取り組んでいるのと同時に、アメリカは国際的な化石燃料融資から段階的に撤退するという約束を放棄している。米国輸出入銀行(USEXIM)とその他の輸出信用機関は、オーストラリアに倣い、パプアLNG事業への支援を除外する方針を策定すべきである」と述べている。

本件に関する問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝/本川絢子
tanabe@jacses.org / honkawa@jacses.org

注:
※1:BNP Paribas、Commonwealth Bank of Australia、Crédit Mutuel、Société Générale、Westpac、BPCE/Natixis 、UniCredit、Crédit Agricole、Australia and New Zealand Banking Group Limited(ANZ)、Bank South Pacific(BSP)、National Australia Bank(NAB)、Asian Developemt Bank (ADB)、Intesa Sanpaoloを指す
https://fairfinance.jp/media/gbhnaemm/papua_lng0716.pdf
※2:https://www.abc.net.au/news/2020-02-27/anz-compensates-cambodian-families-forcibly-evicted-sugar-plant/12006382

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