開発と援助

要請書「ENEOSに対してカーボンニュートラル達成目標年の再強化及び新規化石燃料事業からの撤退を促すエンゲージメントを行ってください」をENEOS株主50社に送付

投稿日:2026年02月20日

要請書「ENEOSに対してカーボンニュートラル達成目標年の再強化及び新規化石燃料事業からの撤退を促すエンゲージメントを行ってください」をENEOSの大株主である金融機関50社に送付しました。

2026年2月20日

ENEOSホールディングス株主の皆様

要請書「ENEOSに対してカーボンニュートラル達成目標年の再強化及び新規化石燃料事業からの撤退を促すエンゲージメントを行ってください」

Action Aid Australia
Center for Environmental Law and Community Rights (CELCOR) Inc
国際環境NGO FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
Jubilee Australia
気候ネットワーク
メコン・ウォッチ
Reclaim Finance

私たちは、金融機関に対してパリ協定の1.5度目標との整合化を図り、化石燃料事業への支援を停止するよう働きかけている環境NGOです。金融機関は、気候変動の激甚化を止めるために、投資先企業が、パリ協定の1.5度目標の経路に整合した移行計画を掲げ、それを実施するよう確保する必要があります。日本の大手化石燃料企業であるENEOSホールディング株式会社(以下、ENEOS)は、2025年5月、カーボンニュートラル達成目標年を2040年から2050年に後退させ、LNGを重点化する方針を発表しました。同年6月には、株主としてENEOSの株主総会に参加した環境NGOスタッフが、同社が計画中のパプアLNG事業がパリ協定1.5度目標にどう整合しているのかと質問したところ、同社経営陣から、エネルギー移行の不確実性に対処する必要があり、エネルギー基本計画に沿っているとの趣旨の回答はありましたが、同事業が1.5度目標に整合しているとの根拠は示されませんでした。そこで、この度、ENEOSの大株主である金融機関50社の皆様に、ENEOSに対して2040年カーボンニュートラル達成目標年の再強化及び新規化石燃料事業からの撤退を求めるエンゲージメントと、一定期間を経てこれらが達成されない場合は、ENEOS株からのダイベストメントをお願いしたく、本要請書をお送りさせて頂きます。

提言1:ENEOSに対して2040年カーボンニュートラル達成の目標に再強化するよう要請すること

ENEOSは2023年5月に策定した「カーボンニュートラル基本計画」(※1)を改定し、「カーボンニュートラル基本計画2025年度版」(※2)を2025年5月に発表しました。2040年度までにスコープ1、2の温室効果ガス(GHG)排出量のカーボンニュートラル実現を目指すとの目標は、改訂版では2050年度までへと大幅に後退しました。供給エネルギーの炭素強度目標も、2040年度までに44g-CO2/MJ達成から、2040年度までに2020年度比20~50%削減(推定45〜72g-CO2/MJ)達成へと弱体化されました。また、2040年までに再生可能エネルギーの総発電容量を6〜8GWに増やすという目標も掲げていますが(※3)、この目標の実施に関する詳細は明らかでないと指摘されています(※4)。

国際エネルギー機関(IEA)は、1.5度目標を達成するためには、グローバルな石油・ガス事業の排出量を2040年代初頭までにほぼゼロに近づける必要があると指摘しています(※5)。したがって、ENEOSにもカーボンニュートラル目標を後退させる余地はなく、以前の計画で掲げていたスコープ1、2の2040年カーボンニュートラル達成、また炭素強度を2040年度までに44g-CO2/MJ達成という目標に戻すべきです。

提言2:ENEOSに対して、パプアLNG事業、タングーLNG事業拡張計画、扇町天然ガス発電所を含む新規化石燃料事業から撤退するよう要請すること

IEAは、2050 年までに温室効果ガス排出のネットゼロを達成するには、新規の化石燃料採掘の余地はないこと(※6)、先進国は2035年までに、途上国は2045年までに電力セクターのネットゼロ達成が必要であることを指摘しています(※7)。また、World Energy Outlook 2025の公表政策シナリオによると、2030年にはLNG供給は需要を上回ることで約650億立方メートルのLNG供給余剰が生じ、LNG価格は下押しされ、短期限界費用に近い水準へと引き下げられると予測されています(※8)。

しかし、ENEOSは国内外で新規LNG事業を計画しています。その一つであるパプアLNG事業は、パプアニューギニア南東部ガルフ州における Elk and Antelopeガス田の開発及びポートモレスビー付近におけるLNG生産設備の建設を目的とする事業です。同事業は2028年から2053年に亘って約2億2千万トンのCO2を排出すると推定されています。現在、ING、豪州輸出金融公社、BNPパリバ、クレディ・アグリコル、スウェーデン輸出信用銀行、ノルウェー輸出金融公社等29行の金融機関が、同事業への資金支援を行わないことを表明しています(※9)。また、三菱UFJフィナンシャル・グループが同事業のフィナンシャル・アドバイザーを務めていると言われていますが、同事業はエクエーター原則に違反しているとして、世界各地の環境NGOが2025年12月10日にEquator Principles Associationに異議申立を提出しました。

ENEOSはインドネシア西パプア州タングーLNG事業の拡張計画である、UCC事業(Tangguh Ubadari CCUS Compression Project)も計画しています。同拡張計画は既存のタングーLNG事業の設備を活用した上で、Ubadariガス田の開発、EGR(Enhanced Gas Recovery(ガス増産))を目的としたCCUSの実施、そしてコンプレッサー設置によるガス送圧能力の増強を目的としています。同拡張計画は2024年11月に最終投資決定(FID)が行われ、2028年以降に順次生産・稼働を開始する予定とされており、日本貿易保険(NEXI)が支援を検討中です(※10)。しかし、既存の設備建設によるマングローブ林破壊、先住民族の移転や狩猟地へのアクセス制限等が生じている他、気候危機を悪化させるとして、市民団体からNEXIに対して同拡張計画への支援を行わないよう要請が行われています(※11)。ENEOSは同拡張計画の他、西パプア州のガエア1およびガエア2鉱区の探査計画にも参画しており(※12)、今後、さらにLNG事業を拡張しようとする動きも見られます。

ENEOSは、2025年5月に日本国内で新たな天然ガス(LNG)火力発電所「扇町天然ガス発電所(仮称)」新設に向けた環境アセスメントを開始しました。この計画は、約75万kWの発電設備1基を開発する計画であり、2033年前半の運転開始を予定しており、年間150~170万トン近くものCO2を排出すると推定されます(※13)。同社は日本国内だけでも発電容量で計220万kWの発電所を有しており、特に近年はLNG火力の新規運転開始・計画が続出しています。

ENEOSはこれら計画中の新規化石燃料事業から撤退するべきです。

提言3:ENEOSに対して、事業で影響を受ける先住民族のFPICを取得し、その詳細を先住民族配慮計画に含めて公表するよう要請すること

先住民族がパプアLNG事業による気候や環境、健康、人権に関するリスクや影響について、これまでに十分に情報提供されてきたと分かる根拠はありません。先住民族の権利に関する国際連合宣言やエクエーター原則等が求めている先住民族との「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」は、コミュニティが自分たちの持つ FPIC の権利について十分に知らされ、プロジェクトに関する正確な情報を受け取った上で成立します。また、FPICはFID等、事業の重要な意思決定決定の「事前」に得られなければならない。同事業では先住民族の権利やプロジェクトに関する情報を影響を受ける先住民族に適切に知らせていないと、パプアニューギニアのNGOであるCELCORは懸念を示しています(※14)。したがって、ENEOSは影響を受ける先住民族のFPICを取得し、FPICを取得したと確認できる情報を含んだ先住民族配慮計画を公開するべきです。

* * *

大変お忙しい中、誠に恐縮ではございますが、3月13日までに、本要請に対する貴機関の対処方針・ご意見をご回答頂けますと幸いです。なお、書面にてご回答頂くことが難しい場合は、対話の機会を設けさせてて頂くことも可能です。ご検討よろしくお願い致します。

本要請書に関するご返答・お問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝/本川絢子
tanabe@jacses.org / honkawa@jacses.org

注:
※1:https://www.hd.eneos.co.jp/company/system/pdf/e_hd_jp_ot_fy2023_01.pdf
※2:https://www.hd.eneos.co.jp/about/carbon_neutral/pdf/index_01.pdf
※3:https://ssl4.eir-parts.net/doc/5020/ir_material_for_fiscal_ym3/164364/00.pdf p.30
※4:https://climateintegrate.org/wp-content/uploads/2025/09/JCCRM25-JP.pdf p.16
※5:https://iea.blob.core.windows.net/assets/f065ae5e-94ed-4fcb-8f17-8ceffde8bdd2/TheOilandGasIndustryinNetZeroTransitions.pdf p.14
※6:https://iea.blob.core.windows.net/assets/deebef5d-0c34-4539-9d0c-10b13d840027/NetZeroby2050-ARoadmapfortheGlobalEnergySector_CORR.pdf pp.20-21
※7:https://iea.blob.core.windows.net/assets/c036b390-ba9c-4132-870b-ffb455148b63/WorldEnergyOutlook2024.pdf p.231
※8:
https://iea.blob.core.windows.net/assets/0a7a40a4-5dcb-4d6e-a7ad-76a1c90ec8eb/WorldEnergyOutlook2025.pdf pp.69-70
※9:https://www.banktrack.org/article/ngos_submit_first_formal_equator_principles_complaint_against_mufg_and_potential_financiers_of_the_papua_lng_project
※10:https://www.nexi.go.jp/environment/info/a/202601071015.html
※11:https://foejapan.org/issue/20260213/28184/
※12:https://www.esdm.go.id/id/media-center/arsip-berita/lima-pemenang-wilayah-kerja-migas-ditetapkan-bukti-industri-migas-masih-menarik-
※13:https://kikonet.org/content/37813
※14:https://www.banktrack.org/article/ngos_submit_first_formal_equator_principles_complaint_against_mufg_and_potential_financiers_of_the_papua_lng_project

送付先一覧:

  • AllianceBernstein Holding LP
  • American Century Cos Inc
  • Amova Asset Management(アモーヴァ・アセットマネジメント株式会社)
  • Anima SGR SpA
  • AQR Capital Management LLC
  • Asset Management One Co., Ltd.(アセットマネジメントOne株式会社)
  • Blackrock Inc
  • BNP Paribas SA
  • Cardano Asset Management NV
  • Credit Agricole Group
  • Daiwa Asset Management Co.Ltd.(大和アセットマネジメント株式会社)
  • Deutsche Bank AG
  • Dimensional Fund Advisors LP
  • DNB ASA
  • Fidelity International (FIL Ltd)
  • FMR LLC
  • Franklin Resources Inc
  • Geode Capital Management LLC
  • Goldman Sachs Asset Management
  • Grantham Mayo Van Otterloo & Co LL
  • Hachijuni Nagano Bank, Ltd.(株式会社八十二長野銀行)
  • HSBC Asset Management
  • JPMorgan Asset Management
  • Kochi Shinkin Bank(高知信用金庫)
  • Legal & General Group PLC
  • Man Group PLC/Jersey
  • Marsh & McLennan Cos Inc
  • Mitsubishi UFJ Asset Management Co., Ltd.(三菱UFJアセットマネジメント株式会社)
  • Nippon Life Insurance Co(日本生命保険相互会社)
  • Nomura Asset Management Co., Ltd.(野村アセットマネジメント株式会社)
  • Norges Bank Investment Management
  • Northern Trust Corporation
  • Okasan Securities Group Inc(株式会社岡三証券グループ)
  • Pacer Advisors Inc
  • Prudential Financial Inc
  • Schroders PLC
  • SEI Investments Company
  • SNS Investment Fund Management/Net
  • St James’s Place PLC
  • State Street Global(ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社)
  • Sumitomo Mitsui DS Asset Management Company, Limited(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)
  • Sumitomo Mitsui Trust Asset Management Co., Ltd.(三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社)
  • Teachers Insurance & Annuity Assoc
  • The Charles Schwab Corp
  • The Vanguard Group Inc
  • Thrivent Financial for Lutherans
  • Tokio Marine Holdings Asset management(東京海上アセットマネジメント株式会社)
  • Toronto-Dominion Bank/The
  • UBS Asset Management
  • WisdomTree Inc
  • 出版物

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Fax: 03-3505-5554 
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