調査提言レポート「地球規模での気候変動対応と日本の貢献を考える~途上国支援をめぐる動向と課題 (JCM・CTCN・日本のイニシアティブ・長期戦略を中心に)~」
COP21にて採択されたパリ協定では、全ての国が参加する2020年以降の新たな 国際枠組みが合意された。これにより、すでに温室効果ガス排出量増加が著しい中 国やインド等の新興国や今後の排出増が見込まれる途上国も気候変動問題に取り組 み、世界全体で実施状況を確認していくこととなった。
パリ協定では、京都議定書では明言されていなかったイノベーションの重要性が 明言された。第10条では技術開発・移転に関する規定がなされており、気候技術セ ンター・ネットワーク(CTCN)及び技術執行委員会(TEC)に対して、技術研究・開 発・実証等に関する追加作業も要請されている。COP22では、技術メカニズムと資 金メカニズムの連携に関する議論が進展し、CTCNをはじめとする技術メカニズムと 緑の気候基金(GCF)等の資金メカニズムとの今後のさらなる連携促進が期待されて いる。
日本は、低炭素技術・製品等の普及等を通じて途上国の温室効果ガス削減・吸収 に貢献するため、現在17か国と協定を結び、二国間クレジット制度(JCM)を推進 するとともに、COP22期間中に「日本の気候変動対策イニシアティブ~途上国のニー ズに応えて~」を発表する等、独自の途上国支援取組を行っている。
パリ協定では、2020年までに長期戦略の策定・提出が求められている。すでにア メリカ・ドイツ・メキシコ等が国連に提出しており、日本も2016年度から環境省・ 経済産業省がそれぞれ議論の場を設置・検討している。長期戦略策定に際しては、 国内対策に加えて、地球規模での緩和(温室効果ガス削減)と適応をいかに促進・支 援していくかも鍵になると考えられる。
そこで、技術・資金の枠組みに関する概要・課題を共有するとともに、今後の政 策・制度の在り方に関する議論・取組み・協力を推進するために、本レポートを発 行する。
本書が、地球規模で気候変動に対処するための技術・資金に関する日本の政策・ 国際制度を検討する一助となれば幸いである。