プレスリリース「ENEOS株主総会でネットゼロ目標年の大幅後退に批判の声」
2025年6月26日
プレスリリース:
ENEOS株主総会でネットゼロ目標年の大幅後退に批判の声
~環境NGOがパプアLNG事業の中止も要請~
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
気候ネットワーク
Oil Change International
6月26日、ENEOSホールディングス株式会社(以下、ENEOS)の株主総会開場前で、環境NGOは、同社による気候方針を、2050年ではなく以前の2040年ネットゼロ達成に戻すこと、そしてパプアLNG事業を中止するよう求めるアクションを行った。同事業は、環境への深刻な影響や人権侵害が指摘され、世界の15銀行が融資を提供しないと表明している。株主として株主総会に参加した環境NGOスタッフは、同事業がパリ協定1.5度目標にどう整合しているのかと質問したところ、ENEOSの経営陣からは、エネルギー移行に不確実性に対処する必要がある、エネルギー基本計画に沿っているとの趣旨の回答はあったが、同事業が1.5度目標に整合しているとの根拠は示されなかった。
ENEOS本社前でのアクションの様子
ENEOSは2023年5月に策定した「カーボンニュートラル基本計画」(※1)にて、2040年度までにスコープ1、2の温室効果ガス(GHG)排出量のカーボンニュートラル実現を目指すとの目標を掲げていた。しかし、2025年5月に改定された「カーボンニュートラル基本計画2025年度版」(※2)では、スコープ1、2のGHG排出量のカーボンニュートラル実現は2050年度までと、わずか2年で大幅に後退した。供給エネルギーの炭素強度目標も、以前は2040年度までに44g-CO2/MJ達成とされていたが、改定版の計画では2040年度までに2020年度比20~50%削減(推定45〜72g-CO2/MJ)達成と弱体化された。以前の計画で掲げられていたCO2フリー水素の国内最大の製造・供給体制を2040年度までに確立という方針は改訂版の計画では削除され、代わりにLNG等の低炭素エネルギーの安定供給が方針に加わった。また、同社はCCS技術を自社の強みと改訂版の計画に記載しており、化石燃料事業を続行する姿勢を見せている。
ENEOSはパプアニューギニアにおけるパプアLNG事業への出資を行っているが、同事業は、パリ協定1.5度目標と整合しないこと、影響を受ける先住民族の「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」が欠如していること、事業地域の60種以上が調査されたことがなく生物多様性への深刻なリスクを及ぼすことなどの問題に直面している(※3)。世界中の NGOが金融機関に対してパプアLNG事業を支援しないよう求めてきた結果、すでに豪州輸出金融公社、BNPパリバ、クレディ・アグリコル等15行の銀行が、同事業への資金支援を行わないことを表明している(※4)。
また、国内で電力事業を展開するENEOSパワーは、2025年5月に新たな天然ガス(LNG)火力発電所「扇町天然ガス発電所(仮称)」新設に向けた環境アセスメントを開始した。この計画は、約75万kWの発電設備1基を開発する計画であり、2033年前半の運転開始を予定しており、年間150~170万トン近くものCO2を排出すると推定される(※5)。同社は国内だけ見ても発電容量で計220万kWの発電所を有しており、特に近年はLNG火力の新規運転開始・計画が続出している。採掘や輸送を含めたライフサイクルを考慮すれば、LNG火力のGHG排出量が石炭火力よりも少ないと主張する根拠は乏しい。
ENEOSは2040年にカーボンニュートラル達成等のこれまでの気候目標と方針を維持し、パプアLNG事業や扇町天然ガス発電所を含む新規化石燃料事業から撤退するべきである。
本件に関する問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝/本川絢子
tanabe@jacses.org / honkawa@jacses.org
注:
※1:https://www.hd.eneos.co.jp/company/system/pdf/e_hd_jp_ot_fy2023_01.pdf
※2:https://www.hd.eneos.co.jp/about/carbon_neutral/pdf/index_01.pdf
※3:https://fairfinance.jp/media/gbhnaemm/papua_lng0716.pdf
※4:https://jacses.org/2673/
※5:https://kikonet.org/content/37813