持続可能な開発と援助プログラム
目標・活動概要
近年、ESG投資やグリーンファイナンスなど、環境や社会に良い効果をもたらす投融資を拡大する動きが活発になっています。しかし、真に持続可能な開発を実現するためには、単に環境や社会に良い効果をもたらす投融資を拡大するのみではなく、人権侵害や環境破壊など、開発における負の影響を回避・最小化する取り組みが不可欠です。日本では途上国向けの開発援助や開発金融において負の影響を回避・最小化するための枠組みや動きが不十分でした。
そこで、当センターでは、開発プロジェクトにおける環境破壊・人権侵害をなくし、環境・社会的に持続可能な開発を実現することを目的として、持続可能な開発援助プログラム(SDAP)を1995年にスタートさせ、欧米との制度比較、開発援助や開発金融を主管する財務省とNGOとの定期協議の立ち上げ、世界銀行、アジア開発銀行(ADB)、国際協力銀行(JBIC)や国際協力機構(JICA)の環境社会配慮ガイドラインの強化を実現してきました。
結果、開発事業サイト周辺における環境破壊や人権侵害を回避する枠組みは一定程度整備されつつありますが、公的金融機関による気候変動をはじめとする地球環境への配慮はまだまだ不十分です。そこで、公的金融機関による石炭火力発電への投融資停止を働きかける活動を2013年に開始しました。
また、近年は民間金融機関による開発事業への投融資が拡大していますが、日本の民間銀行や保険会社の環境社会配慮方針は十分に整備されていません。そこで、2014年に民間金融機関の投融資方針を格付け・比較するFair Finance Guideの取り組みをスタートしました。
近年の具体的な成果についてはJACSESの年次報告書をご参照下さい。また、持続可能な開発と援助プログラムではインターンを募集しています。詳細はこちらを参照ください。
開発援助や開発金融における負の環境・社会影響を回避する取り組みは長らく欧米の助成財団からの助成金に依拠しており、日本の助成財団や市民からの寄付金はほとんどない状況です。こうした状況は海外の財団関係者からは先進国にもかかわらず特異な状況と見られており、日本における安定した資金基盤の確立が求められています。ぜひ本プログラムへのご支援をよろしくお願い致します。
持続可能な開発と援助プログラム
プログラム・ディレクター
田辺有輝
活動内容
1. 開発機関や民間金融機関の環境社会配慮政策の改善
開発プロジェクトにおけるネガティブな環境・社会影響を回避・最小化するために、日本政府、開発機関、民間金融機関の環境・社会配慮政策、情報公開制度、異議申し立て制度などを強化することを目指し、調査・政策提言を行っています。
- 民間金融機関の環境社会配慮に関する提言活動(Fair Finance Guide日本版の共同実施・外部サイト参照)
- 海外石炭火力発電の投融資に関する提言活動(No Coal Go Greenプロジェクトの共同実施・外部サイト参照)
- 大手損保に化石燃料事業への保険引き受け停止を求める提言活動
- JBIC・JICA債券保有者に対して新規化石燃料事業支援の停止を求めるアドボカシー活動
- ADBの環境社会配慮政策、アカウンタビリティ制度、情報公開制度に関する提言活動
2. 開発プロジェクトの環境・社会配慮モニタリング
開発プロジェクトにおけるネガティブな環境・社会影響を回避・最小化し、住民の意思決定への参加を強化するために、日本政府や開発機関が関わる開発プロジェクトの環境・社会影響を調査し、改善策の提言を行っています。
- マタバリ石炭火力発電事業(バングラデシュ)のモニタリング
- タバメシ石炭火力発電事業(南アフリカ)(外部サイト参照)
- ダリパリ石炭火力発電事業(インド)のモニタリング(外部サイト参照)
- タンダ石炭火力発電事業(インド)のモニタリング(外部サイト参照)
- ウランバートル第5熱電供給プラント(モンゴル)のモニタリング(外部サイト参照)
- モルプレB石炭火力発電事業(ボツワナ)のモニタリング(外部サイト参照)
3. NGOの情報収集・分析・発信の強化と政策対話の促進
NGOが調査・政策提言を効果的に実施するための基盤作りとして、定期的な情報発信や政策対話のコーディネートを行っています。
過去の活動
- 世界銀行セーフガード政策のモニタリング
- 世界銀行情報公開政策のモニタリング
- 世界銀行・IMF東京総会(2012年10月)における政策対話の促進
- 国際金融公社(IFC)セーフガード・情報公開政策のモニタリング
- ADB福岡総会に際し、アジア開発銀行プレスキットの発行(1997年)
- アジア開発銀行(ADB)京都総会(2007年)での情報発信・政策提言
- 国際協力銀行(JBIC)の環境社会配慮ガイドラインの改訂・モニタリング
- 国際協力機構(JICA)の環境社会配慮ガイドラインの改訂・モニタリング
- JOGMECの環境社会配慮に関する提言活動
- 日本のODA政策ウォッチ
- 気候変動対策における資金問題
- 原発輸出に関する提言活動
- オムカレシュワール多目的プロジェクト(インド)のモニタリング
- オリッサ州森林セクター開発事業(インド)のモニタリング
- ナガルジュナ石炭火力発電事業(インド)のモニタリング
- デリー・ムンバイ産業大動脈(DMIC)構想(インド)のモニタリング
- タウンサ堰緊急修復事業(パキスタン)のモニタリング
- インダス川・左岸排水事業(パキスタン)のモニタリング
- シンド州沿岸内陸地域開発事業(パキスタン)のモニタリング
- チャシュマ右岸灌漑プロジェクト(パキスタン)のモニタリング
- クルナ・ジェソール排水回復事業(バングラデシュ)のモニタリング
- パドマ多目的橋建設事業(バングラデシュ)のモニタリング
- フルバリ石炭採掘事業(バングラデシュ)のモニタリング
- メラムチ給水プロジェクト(ネパール)のモニタリング
- 西セティ水力発電事業(ネパール)のモニタリング
- アッパーセティ水力発電事業(ネパール)のモニタリング
- アッパーコトマレ水力発電所建設事業(スリランカ)のモニタリング
- ブリーフィングペーパーシリーズの発行
担当: 田辺有輝