ADBの業務には、政府に貸付を行う「公的セクター業務」(Public Sector Operations)の他に、政府保証をつけずに民間企業に直接貸付・出資などを行う「民間セクター業務」(Private
Sector Operations) があります。現在、民間セクター業務はADBの融資総額の10%未満にすぎませんが、民間セクターはADBのみでなく開発機関において、これからますます援助の名のもとに利用強化されていくセクターであると考えます。
しかし、ADBはこれまでのインスペクション政策に、民間セクター業務を適用してきませんでした。つまりこれは、民間セクタープロジェクトからの影響や問題については、住民の異議を無視することを意味しています。今後このセクターに対し、「インスペクション機能」のように市民の声を反映する機能を確保させることは大変重要であり、また緊急な任務であると考えます。
以上から、私たちはADBのインスペクション政策に民間セクター業務を対象に含め、これと同時に、民間セクター業務における情報公開政策の改善と、環境・社会審査を含む業務手続きの明瞭化を求める必要があると考えています。
ADBはインスペクション政策の見直しに関する第1次ドラフト(ワーキングペーパー)を5月に発表し、数ヵ所でコンサルテーション(東京では6月11日)を行っております。さらに7月末に第2次ドラフトを発表しましたが、民間セクター業務に関してはほとんど記述が変わっておりません。
ADB内では、民間セクター業務について何らかの形での適用が検討されている様ですが、「公的セクター業務とまったく同じものではなく」、「簡素化した」機能が示唆されており、公的セクター業務と比べてインスペクション機能のレベルが下げられてしまう可能性があります。特に、内部的には、民間セクター業務局(Private
Sector Operations Department)からの抵抗があるとも聞きます。したがって、民間セクター業務にインスペクション政策が効果的に適用されるように、市民社会から声を挙げる必要があると判断しました。
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