■背景：
世界銀行やアジア開発銀行といった多国間開発銀行（MDBs）において、日本はアメリカと１、２位を争う最大資金拠出国であり、二国間ODAとともに、発展途上国における開発に多大な影響を及ぼしている。 MDBの政策やこれら機関が関与する開発プロジェクトに関する日本の立場／政策の策定は財務省（旧大蔵省）国際局が担当しており、通常、MDBへの日本代表理事も財務省官僚あるいは同省出身者から派遣されている。しかしながらこれまで、こうした政策策定のプロセスや代表理事のMDB理事会における投票行動については、一般市民・NGOに対してほとんど公開されておらず、国会での審議や報告も行われていない。

こうした状況を改善することを目的に、JACSESは1997年4月に「大蔵省・NGO定期協議」を発足させた。この会合では、NGOと大蔵省による政策策定プロセスの透明性を高めるとともに、そのプロセスにおいて環境・人権・ジェンダー・住民参加といった持続可能な開発の原則が反映されることを目指している。

これまで約２年間に渡る定期的な会合を通じ、大蔵省のスタンス・政策に関する情報へのアクセスと、政策決定プロセスにおいて市民の意見を反映させる機会が拡大した。しかし、これらの改善も、これまで関わってきた財務省側官僚の個々の対応によるものであり、政策策定プロセスにおける「参加」あるいは「情報公開」の実効性について制度的な保証は確立されていない。

したがって今後の課題は、MDBsに情報公開や環境配慮について、より明確な原則を制度的に確立するとともに、MDBsに関する財務省（日本政府）のアカウンタビリティを制度的に定着させることにある。以上から、ODA、特に多国間援助に関する情報公開・環境配慮・議会による監視・市民／NGOの政策決定への参加などを保証する法的ならびに制度的措置について、他国の先進事例を比較分析し、政府・国会議員・市民に対して実効性のある提言を行うため、JACSESでは1999年秋から国際比較調査「多国間開発銀行（MDBs）におけるドナー国政府のアカウンタビリティと市民社会の役割〜環境・社会配慮と参加型政策策定プロセスを保証するための法律ならびに制度的措置について」を行ってきた。調査は2000年末に終了しており、現在これに関する報告書を作成中である。

本調査結果が、MDBおよびODAにおける政府の透明性とアカウンタビリティーの向上に役立つことを目指すその一貫として、本セミナー開催を企画している。

■日時：2001年5月19日（土）　開場10：00　開演10：30 　終了17：30
■会場：明治学院大学　国際平和研究所　国際会議室（本館10F）

■プログラム：
10：30　はじめに　

10：35　第一部　MDB改革に向けた欧米からの報告 　 　

1.　MDBsの社会環境配慮に向けた改革
-　世銀中国西部地域貧困削減プロジェクトを例に　-	Kay Treakle （米NGO ・BIC）
2.　社会環境配慮に向けた省庁間の取り組み
-　早期警報システムについてほか　-	John Fizgerald(米国際開発庁/USAID）
3.　米国議会におけるMDB改革の取り組み	Will Singleton（地球環境国際議員連盟/GLOBE USA）
4.　オランダにおける社会環境配慮の実施体制
-　独立環境影響評価コミッション　-	Reinoud Post （オランダ環境影響評価コミッション/ICIA）
質疑・コメント

12：00　昼食

13：30　第二部　MDBのアカウンタビリティーを求めて　〜欧米五カ国調査報告〜

1.　MDBのアカウンタビリティと市民中心のガバナンスの意義	川村暁雄（神戸女学院大学）
2.　MDBに関する政策と実施体制（イギリス、スイスなど）	川村暁雄（神戸女学院大学）
3.　MDBに対する議会・NGOの監視（イギリス、アメリカなど）	JACSES
4.　MDBに対する議会・NGOの役割
-　ナルマダの事例から　-	段家誠（阪南大学）
質疑・コメント

14：20　第三部　ODA改革に向けた日本の取り組み 　 　 　

1.　ODAにおけるアカウンタビリティーの意義
-　サムットプラカン・プロジェクトを事例として　-	松本悟（メコン・ウォッチ）
2.　MDB改革に向けた財務省の取り組み	丸山純一（財務省国際局開発機関課長）
質疑・コメント・ディスカッション

15：55　第四部　市民にこたえる「開発援助」　〜社会環境配慮を求めて〜 　 　-　MDB改革とドナー国の役割　-　　

1.　日本におけるMDBのアカウンタビリティーの課題
-　JACSES調査からの提言　-	JACSES
2.　フロアディスカッション	ゲスト全員

17：15　終わりに