6月9日
国際河川ネットワーク
バンク・インフォメーション・センター
プレスリリース
世界銀行が環境基準を弱める象徴的なプロジェクトを承認
6月8日に、世界銀行は、自身の社会・環境基準を弱める分岐点となるインフラ・プロジェクトをメキシコで承認しました。世界各国の市民団体グループはこの決定に抗議します。
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世界銀行は、メキシコ、グァナファト州のインフラ・プロジェクトへの1億800万ドルの融資を承認しました。このプロジェクトに関して、世界銀行は、自身の環境・社会セーフガード政策ではなく、メキシコの法律および手続きを適用することに合意しました。それらの多くは銀行の既存の基準を満たしていません。このプロジェクトは、世界銀行が現在準備中の、新しい中所得国戦略の最初の大きなパイロット・プロジェクトです[1]。
6月7日に、60か国からの186の市民団体は、世銀プロジェクトにおける社会・環境基準の弱体化に抗議する手紙を世界銀行に送りました。彼らは、メキシコには世界銀行と異なり、プロジェクトに伴う影響住民移転に関する法律が存在していないことを指摘しています。また、環境アセスメントに関するメキシコの法律は、重大な面において、現在の世界銀行の政策よりはるかに弱いことも指摘されています[2]。
アーチュロー・モラールズ・ティラード(グァナファトのメキシコオーデュボン協会の社長)は、次のように言っています:「メキシコの環境はひどく悪化しました。また、グァナファトの人口の半分以上は貧しい生活をしています。故に、世界銀行が新しいインフラ・プロジェクトにおいて、最も厳しい社会・環境基準を遵守することが求められています。」
メキシコのパイロット・プロジェクトは、世界銀行の新しい戦略が、中所得国への貸し付けを増加したいがために社会・環境基準を弱めることになるのでは、という市民団体の懸念を裏付けるものです。ピーター・ボッシャード(国際河川ネットワークのポリシー・ディレクター)は、「国際的な傾向に反して、世界銀行が環境基準を付加価値ではなく障害と見なしているように感じられることに対して不安を覚えます」とコメントしています。
世銀自身のセーフガード政策ではなく主に各国の国内基準に依存することによって、世界銀行は劇的にそのアカウンタビリティを弱めることになるでしょう。これは特に銀行の独立した調査機構であるインスペクションパネルの権限が、国家政策や手続きの審査にまで及ばない事に大きな要因があります。ブルース・ジェンキンズ(バンク・インフォメーション・センターのポリシー・ディレクター)は「世界銀行は、より多くの貸し付けを促進するために、銀行が融資するプロジェクトにより損害を被るかもしれないコミュニティーへの補償の手段をシャットダウンしています。それは容認できないトレードオフです」と言及しています。
世界銀行のセーフガード政策は、銀行が融資するプロジェクトによる環境・社会破壊を軽減するために、過去20年間にわたって形成されてきました。世界銀行による1980年代のインドでの巨大ダムへの融資、1990年代のアマゾンでの道路建設への融資は、より高い環境・社会基準が必要になっていることに国際社会の関心を集めさせました。多くのNGOが、現在の基準の形成に積極的に関わってきました。この基準は他の金融機関によって広く引用されています。現在の世銀基準から離れようとする世界銀行の提案は、開発援助のフレームワークにおいて意味深い変化を象徴しています。
[1] 中所得国戦略のペーパーは国際河川ネットワークが得た、世界銀行の機密ドキュメントです。この論文のコピーおよび戦略の批評は、http://www.irn.org/programs/finance/で閲覧可能です。http://www.irn.org/programs/finance/
[2] 世界銀行へ送られたNGOの手紙には、新しい戦略およびメキシコのパイロット・プロジェクトに対するより詳細な批評が書かれています。こちらは、www.bicusa.org/bicusa/issues/safeguard_policies_at_the_world_bank/1469.phpで閲覧可能です。
http://www.bicusa.org/icusa/issues/safeguard_policies_at_the_world_bank/1469.php
原文はこちらです
JACSESの世界銀行セーフガード政策に関するページはこちらです
186市民団体による抗議レターはこちらです
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