プロジェクト概要:
英国統治時代、パキスタン南部のシンド州沿岸地域は肥沃な土地だった。しかしインダス川における多くのダム・堰建設や流域の灌漑地の拡大等によるインダス川の流量減少によって、河口デルタ地域では、海水流入が発生し、農地の劣化が拡大。近年では、パキスタン国内でも最も深刻な貧困地域となっている。
現在、アジア開発銀行(ADB)は、パキスタン南部で、漁業環境の改善、生態系の回復による貧困削減を目指し、シンド州沿岸・内陸部開発プロジェクトを計画中である。プロジェクトの内容として、漁業マネージメントプランの設立、300kmに渡る参加型マングローブ植林、代替的な収入源の拡大、海洋生態系調査、漁業協定の締結、漁業販売網の整備などがあげられている(環境カテゴリーはB)。2005年12月、ADBの日本特別基金(JSF)より拠出した技術支援(PPTA)65万ドルにより、ニュージーランドのコンサル(ANZDEC)がフィージビリティスタディーの中間レポートを完成。実施機関は、Planning
and Development Department (P&D)。
問題点:
現地の漁業は、十分な収穫量が期待できる期間が4ヶ月(3月〜6月)しかなく、住民はそれ以外のシーズンは出稼ぎに出ている。また、多くの漁民は船の所有者から船を借りて、獲った魚は言い値で買い取られるため、極めて低収入に追いやられている。したがって、例え、このプロジェクトで漁業を整備しても貧困対策の効果が低いと懸念されている。
活動内容:
当センターは、現地の農業再生にはインダス川の流量増加が不可欠であることから、農業の再生をプロジェクトに含め、河川全体でのマネージメントプランの変更を求めて、現地調査、提言活動を実施している。
担当:田辺有輝
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