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プロジェクトは必要なのか?―プロジェクトの問題

(1)環境影響評価と公聴会の不在

インド環境森林省は、1985年に「河川渓谷プロジェクト環境アセスメントガイドライン」(”Guidelines for Environmental Assessment of River Valley Projects ”)を制定し、また1994年の「環境保護法」(”Environmental Protection Act”)では、環境影響評価(EIA)の作成およびプロジェクト実施前の公聴会の開催を義務付けています。しかし、このオムカレシュワール・プロジェクトではEIAが準備されておらず、公聴会も開催されていません。
また、世界銀行や世界自然保護ユニオン(IUCN)が中心となった世界ダム委員会(WCD)の最終報告書においても、「不利な影響を受ける人々がプロジェクトによってもっとも便益を受ける」こと、および「誰にも拘束されず、事前の段階で、かつ十分に情報を提供された上での同意」が必要であるという提言がなされています。しかし、このオムカレシュワール・プロジェクトは明らかに、これらにも沿っていません。

(2)不十分な補償と強制的な移転
マディア・プラデッシュ州には、1989年に制定された「ナルマダ・プロジェクトによる剥奪者のための再定住政策」(”Rehabilitation Policy for the Oustees of the Narmada Projects”)があります。この政策では、ナルマダ・プロジェクトによって土地を失う農民には、土地を補償する(”land for land compensation”)ことが権利付与されています*1。しかし、現実はこれに反して、住民たちにはこうした政策が存在することすら知らされておらず、恐喝されて強制的に移住を迫られ、土地を与えられず、十分でない現金補償金を受け取ることが強要されています。


<オムカレシュワール・ダム建設に反対する住民達の抗議集会:
2003年11月、オムカレシュワール町>

(3)古い計画のもとで疑問視されるプロジェクトの経済効果
マディア・プラデッシュ州は、インドの中でもっとも貧しい州のひとつであり、ダムを建設した後の電力コストを市民が支払うことができるのかどうかも、大きな懸念となっています。
オムカレシュワール・プロジェクトは、1980年代に作られた「ナルマダ渓谷開発計画」という巨大計画のひとつであり、過去の古い時代に計画されたものです。当時計画された第2フェーズの灌漑事業については、プロジェクト地の多くが既に灌漑されています。したがって、当初のプロジェクトの目的も有効ではなくなっています。

(4)宗教的・文化的背景
オムカレシュワール町には、ヒンズー教・シバ神の12の神聖なジョーティリンガムのひとつであるオムカレシュワール寺院があり、歴史的に多くの巡礼者がこの地を訪れてきました。「オム」とは、ヒンドゥーの聖なる鳥を表しており、ナルマダ川の中に浮かぶこの島の形が「オム」に似ているとされています。またナルマダ川は、シバ神が山の上で瞑想したその汗が流れたものとして考えられている神聖な川とされています。この地域に暮らす住民にとって立ち退きを要求されることは、オムカレシュワール寺院およびナルマダ川とともに営んできた長年の地域文化に深い影響を及ぼすこととなるでしょう。


<オムカレシュワール町と寺院>


注)
*1:”3.2(a) Every displaced family from whom more than 25 percent of its land holding is acquired in revenue villages or forest shall be entitled to and be allotted land to the extent of land acquired from it, subject to provision in 3.2 (b) below. (b) A minimum area of 2 Ha. of land would be allotted to all the families whose lands would be acquired irrespective of whether Government land is offered or private land is purchased for allotment. Where more than 2 Ha. of land is acquired from a family, it will be allotted equal land, subject to a ceiling of 8 Ha”.(3.0 Allotment of Agricultural Land, ”Rehabilitation Policy for the Oustees of the Narmada Projects”)

参考)
・“The financing of the Omkareshwar dam in India ?A research paper prepared for Friends of the Earth England Wales and Northern Ireland” (Final version: 8 April 2004), Jan Willem van Gelder
・“The World Bank at 60 : A Case of Institutional Amesia? ? A Critical Look at the Implementation of the Bank’s Infrastructure Action Plan”, Peter Bosshard, International Rivers Network, April 2004

※本件に関し、詳細は当センターまでお問い合わせください。

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