フロンの問題は、モントリオール議定書の削減スケジュールに基づき、各国で生産・消費の規制が行われた結果、先進国を中心にフロンの生産・消費量は削減されました。その結果、「フロンは終わった問題」との認識が広がっていますが、以下のような問題が残っており、対策が求められています。
(1)2つの議定書で規制内容に違いがあり、特定フロンの排出抑制は国際枠組でカバ ーされていない
オゾン層破壊効果を有する特定フロンは、モントリオール議定書において「生産・消費」が規制されるようになりました。一方、高い温室効果を有するフロンは、モントリオール議定書対象のフロンを除いて、京都議定書において「排出」規制がなされるようになりました。こうして、特定フロンの「排出」に関しては両議定書の間に抜け落ちており、規制されないまま残された状態になっています。特に、途上国における特定フロンの回収・破壊をどのように進めるかが課題になっています。
(2)モントリオール議定書では生産・消費が規制されているが、既に生産され機器に充 填されているものがいつ排出するか(バンク問題)
いわゆるバンク問題に関しては、日本でも適切に回収・破壊を推進すべく、制度整備が求められているところです。また、世界に目を転じれば、冷凍空調機器からの排出量が20億t-CO2を超えるとの報告もあり、対策が急務となっています(IPCC/TEAP[2005]
”IPCC/TEAP Special Report: Safeguarding the Ozone Layer and
the Global Climate System”)。
(3)フロンに関するデータの欠損
フロンに関するデータの欠損が十分認識されていないことが指摘されています。例えば、AFEASのデータを用いたグラフは、中国のデータが抜けている等の問題があるものの、世界の総量を的確に表さないまま多用されているのが現状です。排出データに関しても、世界の傾向はわかるものの、どの国からどれくらいの排出があるかの推計が存在しません。加えて、データの欠損が多い中、どのような推計・対処を行っているのか不明瞭であること等が、問題点として指摘されています。
<参考文献等>
・IPCC/TEAP
[2005] “Safeguarding the Ozone Layer and the Global Climate
System: Issues Related to Hydrofluorocarbons and Perfluorocarbons”
・花岡達也「フルオロカーボン類による環境影響の定量的評価および国際環境対策制度の研 究」,東京大学,2004,博士論文
(論文要旨はこちら)
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