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フロン対策の歴史

 

(1)フロンの誕生とフロンの用途、環境への影響の歴史

 フロン類は、米国ミジリー博士が、冷蔵庫等で使用されていた、毒性・可燃性をもつ冷媒に代わる物質として、1920年代に開発したものです。

 それまで利用されてきた冷媒(アンモニアや亜硫酸ガス等)と異なり、無色・無臭で不燃性・化学的に安定・液化しやすいといった特徴を有するフロン類は、様々な用途で利用されています。当初は、従来の冷媒より高価なものでしたが、1930年代の終わりごろまでに、米国内の冷媒として普及し、先進国では、1960年代以降爆発的に消費量が増大しました。

 しかし、1974年、ローランド博士らによってフロンによるオゾン層破壊の仮説が発表されました。これが世界で大きな反響を呼び、米国科学アカデミー等が仮説の実証に取り組み、1976年に最初の報告書が発表されます。その後、様々な機関による実証研究・報告により、次第にローランド博士らの仮説が理論として認められるようになりました。これと前後して、フロン類に対する規制が行われるようになりました。


<フロンの種類と用途についてはこちら>
 ・日本フルオロカーボン協会「主な種類と用途」
 ・美の国あきたネット秋田県公式Webサイト「フロン類の種類」
 ・政府広報オンライン「見逃していませんか?地球温暖化の原因「代替フロン」
 ・ダイキン工業「フルオロカーボン」
 ・のりむら総合サービス「エアコン冷媒ガスの種類」
 ・京立商事株式会社「フロンガスの種類」

<フロン対策の歴史についてはこちら>
 ・経済産業省「T.フロンとは(オゾン層保護と地球温暖化対策)」
 ・村山隆雄「オゾン層保護の歴史から地球温暖化を考える:「モントリオール議定書」20周年、(
  京都議定書)10周年に寄せて」国立国会図書館,レファレンス. (686),2008,pp31-52

<その他参考文献等>
 ・Mario J. Molina and F.S. Rowland, “Stratospheric sink for chlorofluoromethanes: chlorine  
  atom-catalysed destruction of ozone”, Nature, Vol.249, No.5460, June 28, 1974, pp810-812

 ・石川延男・小川義郎『フッ素の化合物:その化学と応用』講談社,1979
 ・富永健・巻出義紘・F.S.ローランド『フロン 地球を蝕む物質』東京大学出版会,1997


(2)フロンのODPとGWP

 フロン類のオゾン層を破壊する能力や地球温暖化に及ぼす影響は、種類によって異なります。各フロン類のオゾン層破壊係数(ODP)と地球温暖化係数(GWP)については、WMO/UNEPの科学評価パネルや気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等がその値を記載した報告書を発表しています。環境省が毎年発表している「オゾン層等の監視結果に関する年次報告書」の巻末資料において、その値がまとめられています。

 その他、同報告書では、フロンの大気放出によって引き起こされるオゾン層破壊や、特定物質等の大気中濃度、太陽紫外線の状況等について記載されています。

表 フロンの環境リスク(ODPとGWP)
種類
製品
オゾン破壊係数
2010年科学評価パネル
(ODP)
地球温暖化係数
第4次IPCC報告書
(100年GWP値※)
クロロフルオロカーボン
CFC-11
1
4750
CFC-12
0.82
10900
CFC-113
0.85
6130
ハイドロクロロ
フルオロカーボン
HCFC-22
0.04
1810
HCFC‐123
0.01
77
HCFC-141b
0.12
725
HCFC-142b
0.06
2310
ハイドロフルオロカーボン
HFC-32
0
675
HFC-125
0
3500
HFC-134a
0
1430
HFC-143a
0
4470
HFC-152a
0
124
HFC-227ea
0
3220
HFC-43-10mee
0
1640
HFC-245fa
0
1030
HFC365mfc
0
794
環境省「平成23年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書」より作成 
※100年GWP値とは、対象となる物質の影響を100年間に亘って積分した値 
 

<参考文献等(フロン排出による環境影響についてはこちら)>
 ・環境省「オゾン層等の監視結果に関する年次報告書」
 ・UNEP Ozone Secretariat ”Scientific Assessment Panel”
 ・IPCC ”PUBLICATIONS AND DATA”
 ・地球産業文化研究所「IPCC情報 各種報告書(原文・日本語訳ダウンロード)」
 ・気象庁「IPCC第4次評価報告書」


(3)フロン規制の国際枠組

 @オゾン層保護の国際枠組

 フロン類によるオゾン層破壊のメカニズムが初めて明らかになって11年後の1985年には「オゾン層保護のためのウィーン条約」が採択されました。この条約の下で、モントリオール議定書が採択・発効(1987年採択、1989年発効)されました。

 ウィーン条約では、締約国が、
   ・オゾン層の破壊により生ずる悪影響から人の健康及び環境を保護するために適当な措置    をとること(第2条1項)
   ・研究及び組織的観測等に協力すること(第3条)
   ・法律、科学、技術等に関する情報を交換すること(第4条)
 等について規定しています。

 一方、モントリオール議定書では、締約国が、
   ・各オゾン層破壊物質の全廃スケジュールの設定(第2条のA〜H)
   ・非締約国との貿易の規制(規制物質の輸出入の禁止又は制限等)(第4条)
   ・最新の科学、環境、技術及び経済に関する情報に基づく規制措置の評価及び再検討      (第6条)
 等について規定しています。

 これにより、締約各国は、オゾン層破壊物質であるフロン類を「特定物質」として段階的に削減していく義務を負うことになりました。先進国と途上国の削減スケジュールには、以下のように、約10年の差があります。



図 CFCs及びHCFCsの規制スケジュール
出典:UNEPオゾン事務局ウェブサイトより作成


<参考文献等(ウィーン条約・モントリオール議定書についてはこちら)>
 ・外務省「オゾン層保護(ウィーン条約:Vienna Convention for the Protection of the Ozone  
  Layer モントリオール議定書:Montreal Protocol on Substances that Deplete the Ozone   
  Layer)」

 ・環境省「モントリオール議定書」
 ・UNEP Ozone Secretariat


 A気候変動の国際枠組

 ウィーン条約・モントリオール議定書の策定を受けて、気候変動・地球温暖化問題についても同様の規制が模索されるようになりました。そこで、1992年、気候変動枠組条約が採択・署名開放されました(1994年発効)。

 同条約では、締約国による、
   ・温室効果ガスの排出及び吸収のインベントリ(目録)の作成
   ・具体的対策を含んだ計画の作成・実施
   ・温室効果ガスを削減する技術等の開発普及等に関する計画の推進
   ・森林等の吸収源の保護拡大に関する対策の推進
 等の共通のコミットメント(第4条)を規定しています。

 条約が策定されても、各国の取組みを推進させていくためには、法的拘束力のある義務内容(数値目標等)を盛り込んだ議定書が必要です。そこで、議定書策定に関する国際交渉では、基準年、目標年限、数値目標、柔軟性措置、途上国参加問題が大きな争点となりましたが、1997年、COP3において、京都議定書が採択(2005年発効)されました。

 京都議定書では、
   ・先進国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある数値目標を各国ごとに設定
   ・代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)を規制対象ガスとすること(附属書A)
   ・基準年を1990年とすること(代替フロン等については1995年とすることも可能)
   ・2008年から2012年の5年間を第1約束期間とすること
   ・目標達成に向けた柔軟性措置として、共同実施(第6条)、CDM(第12条)、国際排出量取    引制度(第17条)を設けること
 等について、記載しています。


参考文献等(気候変動枠組条約・京都議定書についてはこちら)>
  ・経済産業省[2002]「気候変動枠組条約・京都議定書に関するこれまでの交渉経緯」
  ・環境省 「気候変動に関する国際連合枠組条約」
  ・外務省「気候変動に関する国際連合枠組条約の要旨」
  ・外務省「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」

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