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JACSESセミナー
「環境税 〜地球・国・地方の切り札〜」

2003年3月25日
於:星陵会館ホール

第1部 : 報告

第2部 : パネル討論
  
1 - パネラーより
 
 2 - 討論
  3 - 質疑応答、コメント

 

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伊藤氏:
それでは、具体的な論点に入りたいと思う。

どの方も何らかの形の環境関連税導入が必要という考えは一致しているが、具体的な制度、とくに意見が分かれる使途について議論をしたい。またその中で、環境税のあり方、環境税制改革のあり方についての理念を議論していきたい。

使途については、「目的税とし、環境対策に使う」と、「税収中立」とで大きく2つの考え方に分かれる。この制度の違い、ひいては理念の違いについて、まず議論したい。「目的税でも良いがやっぱり問題ではないか」と言う有田さんから。

有田氏:
私は、94年にこのようなシンポジウムでパネリストとして出席したことがある。その際の他のパネリストは全て企業の人だった。そこで環境税について聞かれた際に、なかなか進まない環境対策について、「早く環境税を導入できないのか、環境税は必要だ」と言った。その2年後に、「企業の47%が環境税に賛成」という結果の出たアンケートも報告されたが、その後の議論はなかなか見えてこない。また、消費者の方は消費税のときのような議論にまだまだ至っていない状況で、このような中では例え環境に良いと言われても導入できなくなる可能性もある。

昨秋、ライフスタイル見直しフォーラムで、気候ネットの平田さんや畑さん(平田仁子氏、畑直之氏:気候ネットワーク東京事務所)や足立さんと同席し、一消費者として意見を述べあった。「環境税制改革として炭素税の導入だけでいいのだろうか」と思う一方、消費税の経験から「目的税化しないと消費者は『何に使うかわからない』と考えるだろう」などと考え、悶々とした思いがあった。しかし、そのシンポジウムの中で足立さんたちの話を聞いてすっきりした。かつて、原子力についてのパブリックコメントが行われ、「原発について議論が尽くされていない」と多くの人が指摘したその次の日に、政府による「原発は地球温暖化に有効」という大きな広告が全国紙に打たれたことがあり、「これは危険だな」と思い、それが環境税の使い途を議論する際にも懸念になっていた。クリーンエネルギーや自然エネルギーにお金の使い途を変えていきたいと思っており、この点について議論していけばもっといい形で導入できるのではないか。以上のようなことから、目的税化するのはどうかというのが現状だ。

伊藤氏:
ここでたいへん残念ながら、田端さんがご都合により退席なさいます。田端さんよりぜひ一言。

田端氏:
今日の議論は刺激になった。与党としてなお一層しっかり行いたい。ただ、ぜひご理解いただきたいのは、環境省は人柄のいい人が揃っているからか、省庁の利害が絡む問題では、最終段階でどこかの省に負けてしまう、という点だ。私は10年間環境委員をやっているが、環境に関わる問題は、結局は自民党環境族との、あるいはその裏にいる商工族や経産族との議論になる。炭素税についても具体論になればなるほどそうなるだろう。そして税財政改革までいくと自民党税調という超大物クラスとの議論に必ずなる。鈴木環境大臣は本当に正面からこの問題をお考えのようなので、ぜひ皆さんには環境省をバックアップして頂きたい。与党内での取りまとめの段階で下手をして、炭素税案がつぶされたり凍結されたりすることを危惧している。思い切った案を出してもそれはそれでつぶされるので、どの辺でどのような形が一番いいのか、今そのことを環境省は議論しているのだろう、というのが率直な感想だ。

皆さんからご意見があれば、ぜひ事務所にでもご連絡いただきたいと思う。(田端氏退場)

伊藤氏:
では引き続き、議論に参りたいと思います。

小林氏:
霞ヶ関が100人の村だったら何人が環境省かと言うと、一人もいない。1000人の村だったら1人いるという、たいへん非力な環境省で申し訳ない。ただ、代表なくして課税なしと言うくらい、税は民主主義の原点であるから、必ずしも霞ヶ関の力学だけで決まるものではないだろうと思っている。

税収中立や一般財源化、最終的なグリーン税制改革まで行うには、京都議定書の第一約束期間最終年である2012年の範囲で実現するには、なかなかドラスティックな改革だ、と申し上げたい。個人的には、環境の使用料をきちっと払える経済にならないと、日本も地球ももたないし、日本はもっともたないであろうと考えている。しかし、そのタイムスケジュールや段取りに関しては、知恵と工夫が要るのだろうと思う。

税率の高低と使途の関係について、先ほど「高い税率は教科書的」と言ったが、「環境費用をもれなく税額に反映させる」という考え方が取られた場合、税収が非常に多くなり、仮に税収を政府の環境支出に充てたとしてもなお余剰が生じるし、税の効果だけで環境が良くなってしまうために政府の環境支出というのは要らなくなる。こうした場合には当然ながら、いわゆる二重の配当と呼ばれているが、他の税を減税するための財源に充てる、あるいは政府のほかの歳出に充当させる、ということができるようになる。他方、税率をどんどん低くしていくと、課税による排出削減効果が減るために、どうしてもそれ以外の方法と合わせて環境負荷を減らす、とならざるを得ない。つまり「税収の一般財源化」は、「環境対策には必ずしも使わない」という意味を含んでおり、あるいは「大規模な環境税制改革」となると、「より高い税率の環境税を導入しなければならない」ということになる。そのような選択ももちろん可能だが、2012年までのタイムスケジュールの中でできるのだろうか、ということである。現在、中央環境審議会に制度の検討を依頼しているので、先回りしたことは言えないが、まずは「目的税で、税率が低くても、それを環境対策にまわすことによってCO2を減らしていく」という提案をさせていただくことになると思う。そしてこれは決して税制改革全体を批判するものではない。
         
現在の政府の温暖化対策支出は約1兆円だ。2000年段階では京都議定書の目標と比較して14%もの排出超過がある。2008年までにはこの排出超過はもう少し少なくなるだろうと思うが、それにしても、環境対策投資をもっと行わないとならなくなる。その時に必要となる限りの税率と税収規模という風に考えると現実的ではないだろうか。非力だからそのように言うのだ、と思われるかもしれないが、このように考えている。目的税となった場合の使い方の透明性や最適な配分に関しては、当然しっかり行っていくべきだ。

既存税についても、石油税や道路財源の改革、自動車税のグリーン化等々も実施しているが、ただ、大規模な改革に至らない税制改革やグリーン化では限界があるので、温暖化対策を目的とした税を小規模に導入するのはいかがだろうか、という提案を申し上げたい。

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中川氏:
目的税化という言葉と区別しないといけないのは特別会計だ。道路特別会計のように税も財政投融資も全てを放り込んで道路建設の目的だけに使う、といった類の目的税化は避けるべきだ。これを行うと自己増殖が起こり、剥がすのも大変で、透明性がない、というのが一番問題。

先ほどのお話の、ドイツの炭素税導入と税制改革のような、増税分と交換する形で社会保険料を減らすという、目的税ではなく一般税化した予算全体の組み替えを行い、国民に納得してもらう、ということだと思う。個人的にはこれがなかなか良いと思っている。欧州は国際競争力も念頭にあるのだろうから、消費税が高く社会保険料は低いというのは、輸入品にインパクトがあるため、海外競争力に対して良い効果がある。そんな戦略も背景にあるために欧州では総合的に考えているのだろうと思う。そういうところは大いに勉強させてもらって、そのうち民主党案のVer.2やVer.3といった提案も是非させてもらうし、環境省のステップ2は実際は2004年なので、そのことから、炭素税導入もすべきだと私たちは主張しているところだ。

寺西氏:
私の議論と少しかみ合ってないのかもしれないが、小林さんは環境税の立ち上げに関わったご当人でもあり、10年の思いを持ってこられて、ようやく環境税の具体案を作って国民合意を形成していくという、いわば"関ヶ原"に来ている段階で、その小林さんがこういった弱腰な発言になるのは不満だ。私は、日本で今、環境から税制を改革していくという現実的立場にたった最も実現可能なシナリオの成否は、なによりもまず国民の合意を得られるかどうかであると考えている。既存の税制・財政への国民の不満は鬱積している。私自身も、今までのような税の徴収のされ方、使い方には腹が立っている。

戦略的に言えば、政府税制調査会(税調)での議論にどうやってそういう国民世論を反映させていくかが重要だと思う。「税調の議論を脇において、そこになんとか滑り込めそうなものをちまちま考える」というような弱腰の戦略では、国民世論が環境省の応援団になれない。だから、少なくとも環境省で先頭を走ってこられた小林さんがレベルを引かずに、経産省にせよどこにせよ、まっとうに議論をぶつけていけるような案を、しかも環境省の意見の方が国民から見れば極めて明快で説得性があり、世論もこちらにつくというような案を作っていただきたい。あるいはそのような構えでやっていただきたい。そうでないと、有田さんをはじめ、消費者や、中村さんのような環境に熱い思いを抱いている国会議員団や、国民の世論もNGOも、環境省を応援できない。戦略的にはそこが突破口になる。

昨年11月、環境省は経産省とエネルギー税制改革で合意文書を作った。これはグリーン化のためのファーストステップということで、突破口になる。経産省も既に、エネルギー税制を変えざるをえないという認識に立っている。エネルギー特会のいくつかについては矛盾がいっぱいたまっている。したがって、国民や納税者の観点から、税のとり方と使い方についての問題を議論に付し、この点について、環境の観点からの改革案を環境省は出していくべきだ。そうすれば与党の一部を含めた政党も研究者も国民もNGOも、既存の税財政の歪みや矛盾を「環境税制改革」を突破口にして大きく改善していく、という夢と展望が出てくる。ドイツではそういうことをやったのだと思う。

日本は10年以上構造的不況にあえいでいるが、「環境税制改革」はやり方如何では、今の経済状況の打開への突破口にもなる、そういう改革論をもっとポジティブなビジョンとして出すべきだ。そういうことで知恵が必要なら、関係の研究者を集めてビジョンの検討会を作るということも考えられる。そしてそれをオープンに議論する。そして本当はこういう場に経済産業省の人も呼んできて議論するようにしないと、国民的合意は得られないと思う。多少不満をぶつけて申し訳ないが、思いが熱いということで受け止めていただければと思う。

伊藤氏:
ありがとうございます。刺激的なご意見で議論も熱くなってまいりましたが、中村さんはいかがでしょう。

中村氏:
私は大きなことを言っているつもりはなく、最も現実的であるために、世の中に受け入れられないと思っている。世の中はもう少し幻想で動いている。この問題は、自民党が政権をとっている限りだめだ。民主党も好きではないが、環境問題ではずっとましだ。政権交代がないとラジカルに進まない、というのが事実だ。環境省がいくら思いを持っていても大きな声で言えない、というのが現実だ。

京都議定書の目標達成は、日本はCOP3の主催国だったこともあり、国際公約の中でもとりわけ重い。6%の削減は自民党でもやらなければならない。現実的に、企業の自主的努力などありえないから、何かやらないといけないところまで追い込まれてきている。この「環境・持続社会」研究センターの具体案は、この炭素税なら2%削減できるのだから、これを飲まざるを得ない部分がある。これをどうやってプッシュしていくべきか。そこは自民党の政権でもやれるし、あまり妥協しない形で導入するチャンスがあると思う。

ただ、それで環境問題の大きな解決ができるかどうか。日本が不況になるのは当たり前のことだ。日本は80年代から成熟社会となったのはわかりきっており、そこからずっと経済成長を続けるのだという、新興宗教のように信じ続けるほうが間違っていた。当時、大平さん(大平正芳首相、78年〜80年)が、「経済大国から文化大国へ」との"田園都市構想"を掲げた日本の大転換となる計画を作り、20年後30年後に実現させるはずであったのだが、ところが彼が急死して日本の運命が変わってしまった。その後も日本は右肩上がりを夢見た結果、とんでもない暴走が続いてきて今破滅した。重化学工業で80年代に世界の経済大国にのし上がったが、産業の空洞化がまさに今どんどん起こっている。苦し紛れに公共事業に金を注ぎ、巨大な財政赤字を作って1000年経っても返せないような状況である。

一方では、新しい産業計画を作れず、日本という国の運営の仕方を転換しなかったために、バブル経済に突入するしかなかった。今抱えている問題は、産業の空洞化、金融の機能麻痺、巨大な借金であり、経済成長はやりたくてもできない。日本は、あらゆる努力をして経済成長を求めた結果、その矛盾によって墜落したと言える。

今後は食料危機が来る。日本のカロリーベースの自給率は40%で、世界でも最低だ。食糧危機は地球温暖化とも直接関係している話である。食料を確保する体制作りと、増大する失業者に対してその労働人口を吸収するという点でも、農林水産業の復権、石油を使わずに人を使うという農業を、健全な共同体をたくさん作って行うべきだ。このような一極集中という形はリスクが高い。そうなると環境行政も実は中央集権ではやりにくい。世界レベルの環境政策を国連が決めて全世界に発信しても、各地で条件が違うために実施できない。日本でも、霞ヶ関で一律に決めたところでそれはできない。従って、これからの環境を持続できるような行政というのは、"地域主権主義"が基本として必要になってくる。だから、主導権をもっと地方自治体に渡す、という意味で税制を考える方法もあるのではないかと思う。その方が具体的だと考えている。

足立:

「環境省の考えている炭素税の目的税化は既得権益化するので良くない。一般財源化をするように」と言うような事を経済界に言われているようではまずい。炭素税が導入される可能性は高いと思われるが、温暖化対策と称して、いろいろな省庁におかしな形で予算がばらまかれるような、おかしな炭素税が通るのではないかと懸念している。それを何とかするということで、全政党、各産業界、様々なNGOなどに来ていただく"ラウンドテーブル"のような形のものを行いたい。今回の議論を受けて、今後どのようにやっていくかが重要だろう。今日は「環境省がんばれ」と言うプレスリリースを出した。環境省の案が日本の案になるように、我々がバックアップできるような良い案を環境省が作ることを期待する。

また、「税収中立でなければ絶対いけない」とも思っておらず、市民がチェックでき、きちんとした温暖化対策に使われるのであれば良いと思っている。NGO側も温暖化対策予算に対する評価軸を作って、「こういう予算なら支持できる」というものを提案していくべきだと思っている。

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