■森林環境税・水源税とは
森林環境税・水源税とは、森林の持つ水源涵養、水質の改善、土砂災害の防止などの公益的機能をその地域住民が享受していることに基づいて、地方自治体がそれらの機能の低下を防ぐために森林整備を行い、その費用負担を地域住民に求める手段としての環境税の総称です。林野庁の資料では、森林環境税・水源税にあたるものとして様々な名称が並んでいますが、大きく分けると、森林環境税と水源税の2つのタイプに大別できます。
水源税 |
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森林の水源涵養機能に着目し、その機能の回復・維持等のために地方自治体が森林整備等の事業を行い、その費用負担を住民に求める。 |
森林環境税 |
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森林を、水源涵養機能だけでなく、台風や大雨時の土砂災害防止機能、生物多様性の保全、夏の気温を低下させるなどの気候緩和機能、レクレーションの場の提供など様々な公益的機能を持つものととらえ、それらの機能を回復・維持するための森林整備事業を地方自治体が行い、その費用負担を住民に求める。 |
■森林環境税・水源税の導入/検討状況
森林保全を目的として森林環境税・水源税などの環境税を検討・導入する自治体が増加しています。以下は、既に導入済もしくは導入を決定した自治体です。
○ 高知県 :2003年4月「森林環境税」導入
○ 岡山県 :2004年4月「おかやま森づくり県民税」導入
○ 鳥取県 :2005年4月からの「森林環境保全税」導入決定
○ 鹿児島県 :2005年4月からの「森林環境税」導入決定
○ 島根県 :2005年4月からの「水と緑の森づくり税」導入決定
○ 愛媛県 :2005年4月からの「森林環境税」導入決定
森林整備・保全を目的とした地方税を検討している都道府県は増加傾向にあり、林野庁の調べによると、森林整備・保全を目的とした地方税を検討または導入している都道府県は全部で35となっています(2004年12月末現在)。
■課税の目的
森林環境税・水源税は、さまざまな公益的機能を持つとされる森林の保全を行うことが目的で、課税はそのための費用調達の手段です。費用負担を住民に求める根拠については、既に述べたとおり森林の公益的機能の利益を住民が享受しているからです。
■課税方式
課税方式にはこれまで主に「水道使用料金への課税方式」と「県民税への上乗せ方式」の2つの可能性が議論されています。両者にはそれぞれ利点・欠点が存在します。(詳細については「JACSESディスカッションペーパー:地方公的資金シリーズ@森林環境税・水源税の現状と課題〜今後の森林保全システムの構築にむけて〜<Version 1>)を御参照ください)
なお、水道課税方式は水道事業者などの反対もあり、現実に採用されているケースは今のところなく、全て県民税への上乗せ方式を採用しています。
■税率
現在導入が決まっている森林環境税・水源税の税率は以下のようになっています。
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高知県 |
岡山県 |
鳥取県 |
鹿児島県 |
島根県 |
愛媛県 |
個人 |
年額 500円 |
年額 500円 |
年額 300円 |
年額 500円 |
法人 |
年額 500円 |
年額 1,000〜40,000円 |
年額 600〜24,000円 |
年額 1,000〜40,000円 |
個人についてはどの自治体も定額となっているが、法人の場合は高知県のみが定額、岡山県、鳥取県、鹿児島県が資本等によって納税額か増える仕組みになっています。(また、これらは県民税の均等割への上乗せであるが、均等割の税率は個人が定額1000円、法人が資本等に応じて2〜80万円となっています。)
■税収使途
上述したとおり、そもそも森林環境税・水源税は森林保全のためのさまざまな事業にかかる費用の負担を住民に求めるものであり、その点が価格インセンティブによって環境負荷を削減させることが目的の炭素税とは異なっています。その事業が森林保全に何ら効果がなければ、課税そのものが不必要となってしまうため、森林環境税・水源税を導入するうえで税収の使途は最も重要なポイントと言えます。適切な制度となるよう、事業評価のための第三者機関の設置などが重要と考えられます。
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