プロジェクト概要:
パキスタン中央部を流れるインダス川にある老朽化したタウンサ堰(1958年完成)の決壊を防ぎ、周辺地域の水資源を確保するために、堰、水門、付帯設備の修復を行うプロジェクト。総工費1億5000万ドルのうち、世界銀行が1億2300万ドルを融資している(2004年9月に融資決定)。また、日本政府は、この水門の詳細設計のために、51億6500万円を無償資金援助として拠出し(2005年4月30日に交換公文調印)、設計をJICAが実施。実施主体はプンジャブ州灌漑・電力局。
問題点:
しかし、プロジェクト現地では以下のような問題が発生している。
- 移転した住民への補償が不十分:移転計画書では広さによって補償額が異なるが、実際は一律額で支払われている。
- 移転した住民の生活環境が悪化:設計不備のため、移転地の水はけ・衛生環境が悪く病気が蔓延。協定に違反して深夜に工事が行われている。電力局の指示に反して高圧電線直下の家屋もある。
- 正式な土地所有権を持っていない人を提訴:40年以上住んでいるにもかかわらず土地の所有権がないとして、38人が政府によって裁判に提訴されている。
- 流域変化により広大な農地が侵食:堰修復のための防水用の囲い建設によって、流域が変化。場所によっては2〜3kmも侵食が進行している。住民移転も起こっているが失った土地・家屋への補償はされていない。
- 農地の浸水害(液状化)の進行:堰修復のために、左岸の灌漑用水路に限界まで水を流しているため、農地の液状化が深刻化、農作物の根が腐ってしまうため、農民に被害をもたらしている。
- 飲料水、農業用水の不足:堰修復のために、右岸の灌漑用水路を事前通告なく半年間停止したため、用水路の下流数十キロに渡って、飲料水、農業用水が不足。農作物被害、病気の蔓延、スラムへの移転などが発生したが、救済措置も行われず、補償も払われていない。
上記の問題を解決する為に、当センターでは、現地調査、世界銀行・日本政府等への政策提言を実施しています。
活動内容:
担当:田辺有輝
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