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成果文書案の主要論点


成果文書案は同じような内容が複数の箇所に書かれているため、複数のパラグラフで同じような内容の交渉が行われている。したがって、以下では、成果文書案の各項目を原則、目標、政策手段、組織、課題別に順番を並べ替え、同テーマのパラグラフを整理した上で紹介する。各交渉テーマについて、成果文書ゼロドラフトの内容 *1と、その後の交渉における各国政府の主な主張 *2を掲載した。

◆共通だが差異ある責任の原則 *3について

成果文書ゼロドラフトの内容:
パラグラフ9. 我々は、共通だが差異ある責任の原則及び天然資源に対する各国の主権の原則に従い、我々の集団的尾及び各国の独自の取り組みを通じて世界的に持続可能な開発を強化する必要性を認識する。

各国の主張:

  • G77+中国は、合意文書の各所において「共通だが差異ある責任の原則」を記載するよう提案している。パラグラフ9については、「共通だが差異ある責任の原則」を含むリオ原則に基づいて、気候変動枠組み条約、生物多様性条約、砂漠化対処条約のコミットメントの完全実施を記載するよう求めている。
  • 先進国各国は、パラグラフ9を含め、合意文書の各所において「共通だが差異ある責任の原則」を記載することに反対している。

◆持続可能な開発目標(SDG)について

成果文書ゼロドラフトの内容:
パラグラフ105. 我々は、持続可能な発展に向けた進展を測定、加速させるためには目標、ターゲット及び節目(マイルストーン)が不可欠であることと認識し、2015 年までに以下を策定するための包括的プロセスを開始することに合意する:
a) 持続可能な発展の3つの側面の統合的で均衡の取れた取り扱いを反映し、「アジェンダ21 」の原則と整合的であり、国による異なるアプローチを許容しつつも普遍的で全ての国に適用可能な、「持続可能な開発目標(SDG)」
b) 定期的なフォローアップと達成に向けた進展についての報告のメカニズム

各国の主張:

  • 持続可能な開発目標(SDGs)の設定については、先進国、途上国とも概ね合意を得ている。
  • アメリカ、カナダ、日本は、ポスト・ミレニアム開発目標(MDGs) *4の策定プロセスと持続可能な開発目標(SDGs)の策定プロセスの統合・一本化を求めている。

◆経済的手法・財政手段について

成果文書ゼロドラフトの内容:
パラグラフ32. 我々は、各国が依然としてグリーン経済構築の初期段階にあり、お互いに学びあうことができることを認める。我々は、発展途上国を含む一部の諸国におけるグリーン経済開発のポジティブな経験に留意する。我々は、各国のニーズ及び選好に適合した政策及び措置の組み合わせが必要であることを認識する。政策の選択肢には、とりわけ、規制、経済及び財政手段、グリーン・インフラストラクチャーへの投資、財務上のインセンティブ、補助金改革、持続可能な政府調達、情報開示及び自主的パートナーシップが含まれる。

各国の主張:

  • G77+中国は、経済的手法・財政手段を含むグリーンエコノミー実現のための政策手段の例示に反対している。
  • EU以外の先進国は、経済的手法・財政手段を含むグリーンエコノミー実現のための政策手段の例示について、概ね合意している。
  • EUは、パラグラフ104. Tredecにおいて、環境税*5、規制、排出量取引*6などによる環境外部費用の内部化や生態系サービスの価格措置制度*7の促進に関するコミットメントの合意を求めている。ノルウェーも、パラグラフ28 quint、パラグラフ28 sextにおいて同様の提案を行っている。

◆持続可能な開発とは相容れない補助金の段階的な廃止*8について

成果文書ゼロドラフトの内容:
パラグラフ42. 我々は、グリーン経済構築に向けて大きな進展を実現するには全ての諸国において新たな投資、新たな技能育成、技術の開発、移転及びアクセス並びにキャパシティ・ビルディング(能力開発)が必要になることを認識する。我々は、この点に関して発展途上国に支援と提供する特別の必要性があることを認め、以下について合意する: <中略>
c) 環境に大きな悪影響を及ぼし、持続可能な開発とは相容れない補助金を段階的に廃止すると当時に、貧困層及び社会的弱者を保護する措置を講じる

パラグラフ126. 我々は、脆弱なグループを保護する保障措置を維持しつつ、化石燃料、農業、漁業に関するものを含めて、持続可能な開発への移行を妨げている市場を歪め、環境へ悪影響を及ぼす補助金の段階的な撤廃を支持する。

各国の主張:

  • スイス、メキシコ、ニュージーランドは、補助金の段階的撤廃に対する強いコミットメントを要求している。EUは、化石燃料や破壊的な消費に関する補助金の段階的廃止に向けた国際的な目標設定や実施促進に関する新たなプラットホームの設置を提案している。
  • カナダは、段階的撤廃ではなく大幅な削減への修正を提案。オーストラリア、カナダ、日本は、段階的撤廃の対象を非効率な化石燃料の補助金に限定することを提案。日本は、段階的撤廃の対象から農業・漁業補助金を除外するよう求めている。アメリカはポジションを留保している。

◆新たな追加的かつ大規模な資金源の提供について

成果文書ゼロドラフトの内容:
パラグラフ42. 我々は、グリーン経済構築に向けて大きな進展を実現するには全ての諸国において新たな投資、新たな技能育成、技術の開発、移転及びアクセス並びにキャパシティ・ビルディング(能力開発)が必要になることを認識する。我々は、この点に関して発展途上国に支援と提供する特別の必要性があることを認め、以下について合意する:
a) 発展途上国に新たな追加的かつ大規模な資金源を提供する

パラグラフ113. 我々は、開発途上国の優先順位とニーズに沿う形で、資源配分において持続可能な開発を優先すること並びに持続可能な開発に向けた開発途上国への資金協力の提供を大幅に増加させることを求める。

各国の主張:

  • カナダは、持続可能な開発に向けた開発途上国への資金協力の提供を大幅に増加させることに反対している。アメリカはパラグラフ42 a)の削除を求めており、パラグラフ113を留保している。
  • G77+中国は、パラグラフ112. alt terにおいて、気候変動枠組み条約の文脈でコミットされた、新規かつ追加的で政府開発援助(ODA)を代替しない資金拠出の完全な実施を求めている。また、パラグラフ112. Quatにおいて、持続可能な開発の実現に向けた新たな資金ファシリティを国際金融機関に設置することを提案している。
  • 先進国各国は、G77+中国が提案したパラグラフ112. alt ter及びパラグラフ112. Quatに反対している。

◆革新的な金融手段 *9の役割を促進する国際的プロセスの立ち上げについて

成果文書ゼロドラフトの内容:
パラグラフ42. 我々は、グリーン経済構築に向けて大きな進展を実現するには全ての諸国において新たな投資、新たな技能育成、技術の開発、移転及びアクセス並びにキャパシティ・ビルディング(能力開発)が必要になることを認識する。我々は、この点に関して発展途上国に支援と提供する特別の必要性があることを認め、以下について合意する: <中略>
b) グリーン経済構築のための革新的な金融手段の役割を促進する国際的プロセスを立ち上げる

各国の主張:

  • 日本は「国際的プロセスを立ち上げる」から「国際プロセスの立ち上げを検討する」への変更を求めている。
  • 米国はパラグラフ42 b)の削除を要求している。

◆民間企業の報告サイクルに持続可能性情報を盛り込むことを義務付ける世界的な政策枠組み *10について

成果文書ゼロドラフトの内容:
パラグラフ24. 我々は、全ての上場企業及び大手民間企業が持続可能性問題を考慮し、報告サイクルに持続可能性情報を盛り込むことを義務付ける世界的な政策枠組みを求める。

各国の主張:

  • EU、スイス、ノルウェーはパラグラフ24の内容を概ね支持している。
  • 韓国、アメリカ、カナダ、G77+中国、ニュージーランドはパラグラフ24の削除を求めている。アメリカ、カナダ、ニュージーランドは、パラグラフ24. Altにおいて、企業によるサステナビリティ・レポーティングの奨励を提案している。

◆持続可能な開発委員会(CSD)の強化/改組について

成果文書ゼロドラフトの内容:
パラグラフ49. 我々は、国連システムにおける持続可能な開発に関する高級レベル委員会としての持続可能な開発委員会(CSD)の役割を再確認する。我々は、より限定された一連の諸課題に対するより集中度が高く、均衡が取れ、応答性の高い関与及びその決定の実施強化を確保する措置を含めて、持続可能な開発の実施をより良く推進、促進及び調整するために委員会の仕事の方法、アジェンダ及び仕事のプログラムを改善するための選択肢を検討することに合意する。我々はまた、自主的レビュー・プロセスを含む委員会のレビュー機能を強化する手段を検討することに合意する。

パラグラフ49. (代替案)我々は、CSDを持続可能な開発の3つの側面の統合に関連した事項を検討する権威あるハイレベルな組織として機能する持続可能な開発理事会に改組することを決議する。

各国の主張:

  • ノルウェー、スイス、韓国は、持続可能な開発委員会(CSD)の持続可能な開発理事会への改組を支持している。
  • 日本、メキシコは、持続可能な開発委員会(CSD)の持続可能な開発理事会への改組に反対している。
  • G77+中国は、どちらのオプションを選択するかを留保している。EUは、加盟国内で検討中であることを表明している。

◆国連環境計画(UNEP) *11の能力強化/環境のための国連専門機関の創設について

成果文書ゼロドラフトの内容:
パラグラフ51. 我々は、管理委員会における普遍的メンバーシップを創設することによりそのマンデートを達成するために国連環境計画(UNEP)の能力を強化することで合意し、政策調整を深化させ、実施手段を強化するためにその資金基盤の大幅増加を求める。

パラグラフ51. (代替案)我々は、UNEPに基づき、その管理委員会が普遍的メンバーシップを有し、安定的、適切かつ予測可能な資金拠出によって支えられる改定・強化されたマンデートを持ち、他の国連専門機関と対等に活動する環境のための国連専門機関の創設を決議する。ナイロビに本拠を置くこの専門機関は他の専門機関を緊密に協力するものとする。

各国の主張:

  • EU、韓国は、環境のための国連専門機関の創設を支持している。
  • アメリカ、カナダ、日本、ロシアは、環境のための国連専門機関の創設に反対している。
  • カナダ、日本は、国連環境計画(UNEP)の能力強化を支持しつつも、資金基盤の大幅増加に反対している。

◆国際金融機関・国際貿易機関等のプログラム戦略の見直しについて

成果文書ゼロドラフトの内容:
パラグラフ54. 我々は、世界銀行と国際通貨基金(IMF)を中心とする国際金融機関、地域開発銀行、国連貿易開発会議(UNCTAD)及び世界貿易機関(WTO)が世界貿易規制において持続可能な開発に相応の考慮を払うべきであると認識する。この点に関して、我々は、国際金融機関に対して持続可能な開発の実施のために発展途上国に対するより良い支援の提供を確保するためにそのプログラム戦略の見直しを要請する。

各国の主張:

  • 国際金融機関の戦略見直しは先進国の間では概ね支持されている。アメリカは国際金融機関の環境・社会セーフガード政策 *12の見直しを含めることを提案している。
  • ニュージーランド、日本は、国連貿易開発会議(UNCTAD)及び世界貿易機関(WTO)を戦略見直しの対象に含めることに反対している。
  • G77とメキシコは、パラグラフ54. Bisにおいて、国際金融機関における途上国の投票権・発言権の強化を求める提案を行っている。この提案は、EU、アメリカ、日本、カナダ、ニュージーランド、韓国がリオ+20で議論するべき議題ではないとして反対している。

◆オンブズパースンないし将来世代のための高等弁務官の設置について

成果文書ゼロドラフトの内容:
パラグラフ57. 我々は、持続可能な開発を促進するために、オンブズパースン(Ombudsperson=行政監督官)ないし将来世代のための高等弁務官の設置をさらに検討することで合意する。

各国の主張:

  • カナダ、ノルウェーは、パラグラフ57を支持している。EUは、高等弁務官の設置を支持している。
  • G77+中国、日本、ロシア、ニュージーランドは、パラグラフ57の削除を求めている。

◆食料に対する権利について

成果文書ゼロドラフトの内容:
パラグラフ64. 我々は、食料に対する権利を再確認し、全ての諸国に自国内の食料生産、国内及び世界の農業食品市場へのアクセス改善及びサプライ・チェーン全体における廃棄物削減への投資増大を通じて食料生産の持続可能な強化の重点化とともに、女性、小自作農、青少年及び先住民の農業者に対する特段の配慮を求める。 我々は、国民の適切な栄養を確保することにコミットしている。

各国の主張:

  • EU、ノルウェー、リヒテンシュタインは、食料に対する権利を支持している。
  • G77+中国、アメリカ、日本は、食料に対する権利を含めることに反対している。

◆食料価格の安定について

成果文書ゼロドラフトの内容:
65. 我々はより透明性が高く開放されている貿易システム、さらに、必要に応じて、食料価格と国内市場の安定に寄与し、土地、水及びその他の資源へのアクセスを確保し、社会的保護プログラムを支援するプラクティスを求める。

各国の主張:

  • G77+中国は、投機による食料価格の変動対策として、適切な規制の導入と監視制度の導入による市場の透明性向上を提案している。
  • ニュージーランド、アメリカはG77+中国の投機による食料価格の変動対策に関する提案に反対している。

◆水について

成果文書ゼロドラフトの内容:
パラグラフ67. 我々は、人生の全面的喜び及びあらゆる人権にとって不可欠な人権として安全で清潔な飲料水及び公衆衛生の権利の重要性を強調する。さらに、我々は、貧困と飢餓の撲滅、公衆衛生、食料安全保障、電力、農業及び農村開発を含む持続可能な開発にとっての水資源の死活的重要性を強調する。

各国の主張:

  • G77+中国は、「安全で清潔な飲料水及び公衆衛生の権利」を含めることを支持している。
  • カナダ、アメリカ、イスラエルは、「安全で清潔な飲料水及び公衆衛生の権利」を「不可欠な人権」として記載することに反対している。EUは当該記載について留保している。

◆エネルギーについて

成果文書ゼロドラフトの内容:
パラグラフ70. 我々は、2030年までに消費及び生産の双方で拡張するための現代的エネルギー・サービスの基本的最小限レベルへの普遍的アクセスの提供及び全ての諸国において再生可能エネルギー源及び技術の開発及び活用の推進を通じて世界的エネルギー・ミックスにおける再生可能エネルギーのシェアを2030年までに倍増させることを目標とする、国連事務総長が開始した「全人類のための持続可能なエネルギー」イニシアティブ *13をさらに前進させことを提案する。我々は、エネルギー源の効率的でより広範な活用を提供するために、発展途上国に対する十分な質を有し、時宜を得た形で届けられる適切な資金源の影響を求める。

各国の主張:

  • EU、アイスランド、韓国は、国連事務総長が開始した「全人類のための持続可能なエネルギー」イニシアティブをより強いコミットメントにするよう求めている。
  • カナダは、「再生可能エネルギーのシェア」を「ゼロまたは低炭素排出エネルギー」に変更するよう求めている。この変更はEUが反対している。
  • G77+中国は、パラグラフ70の削除を求めており、エネルギーアクセスの改善に重点を置いたテキストにするよう求めている。

◆持続可能な消費と生産に関する計画10 年枠組みについて

成果文書ゼロドラフトの内容:
パラグラフ97. 我々は、国連持続可能な開発委員会第19 回会合交渉において詳述された文書に基づき、持続可能な消費と生産(SCP)に関する国際協定の一貫として、持続可能な消費と生産に関する計画10 年枠組みを構築することに合意する。

各国の主張:

  • アメリカ、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、スイスは、持続可能な消費と生産に関する計画10 年枠組みを「国際協定の一環」とすることに反対している。
  • G77+中国は、非持続可能な消費と生産のパターンの改革を先進国が優先的に取り組むことを求めている。

脚注:

  1. 成果文書ゼロドラフトの本文は英語であるが、本稿では環境省仮訳を引用した。
    http://www.mri.co.jp/SERVICE/rio20/zerodraft.pdf
  2. 第1回成果文書交渉会合(2012年3月19日〜23日)及び第3回非公式会合(2012年3月26日〜27日)における成果文書案の交渉テキストは、会合参加者限りとして配布されており、一般公開はされていない。ただし、議論の内容は、持続可能な開発に関する国際研究所(IISD)のウェブサイトでも公開されている。
    http://www.iisd.ca/uncsd/ism3/
  3. 環境と開発に関するリオ宣言の第7原則に定められたもの。「各国は、地球の生態系の健全性及び完全性を、保全、保護及び修復するグローバル・パートナーシップの精神に則り、協力しなければならない。地球環境の悪化への異なった寄与という観点から、各国は共通のしかし差異のある責任を有する。先進諸国は、彼等の社会が地球環境へかけている圧力及び彼等の支配している技術及び財源の観点から、持続可能な開発の国際的な追及において有している義務を認識する。」と規定されている。
    http://www.env.go.jp/council/21kankyo-k/y210-02/ref_05_1.pdf
  4. ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)は、開発分野における国際社会共通の目標で、2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレニアム宣言を基にまとめられたもの。2015年までに達成すべき8つの目標(目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅、目標2:初等教育の完全普及の達成、目標3:ジェンダー平等推進と女性の地位向上、目標4:乳幼児死亡率の削減、目標5:妊産婦の健康の改善、目標6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止、目標7:環境の持続可能性確保、目標8:開発のためのグローバルなパートナーシップの推進)が設定されている。
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs.html
  5. 環境税とは、環境保全のために課す税のことで、主な働きとして、「環境負荷の低減と、環境保全推進のためのインセンティブ(誘導)の付加」と「税収による環境保全や、その他の政策への貢献」がある。炭素税、窒素酸化物税、硫黄酸化物税、産業廃棄物税などが該当する。環境保全を第一の目的としたものではなく、結果的・無意識的に環境にかかわっている税は環境関連税と呼ばれ、日本の自動車関連税やエネルギー税などが該当する。
  6. 排出量取引制度は、排出削減主体が市場で排出量を取引する仕組みで、国内(域内)排出量取引の他に、国際排出量取引がある。国内(域内)排出量取引は、海外ではEUやニュージーランドが、国内では東京都と埼玉県が導入しており、政府が企業/事業者に排出枠(キャップ)を割り当て、トレード(取引)も認めるキャップ&トレード型の制度を採用している。国際排出量取引は、京都議定書で「京都メカニズム」として認められているIET(国際排出量取引)、CDM(クリーン開発メカニズム)、JI(共同実施)がある。このうち、CDM・JIは、追加的な排出削減対策がなされない場合の排出量を「ベースライン(基準)」として設定し、ベースラインに対して、温室効果ガス削減プロジェクトの実施により得られた削減分が売買可能なクレジットとして与えられる、ベースライン&クレジット方式に基づいている。
  7. 国際レベルでの代表的な取組みとして、生物多様性の保全が経済的利益につながることを伝えるためにはじめられた「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」プロジェクトがある。同プロジェクトでは、経済学的な観点からの生物多様性喪失について世界レベルで研究された成果を取りまとめており、報告書は、研究者向けの「D0(ドキュメント0)」、政策立案者向けの「D1」、地方行政担当者向けの「D2」、企業向けの「D3」、市民向けの「D4」の5つから構成される。D0からD3までを統合した概要版最終報告書は、2010年10月に日本の愛知・名古屋で開催された生物多様性条約COP10で発表された。
    http://www.teebweb.org/Home/tabid/924/Default.aspx
  8. 化石燃料補助金については、2009年9月にG20首脳声明で「中期的に、不経済な消費を奨励する非効率な化石燃料に対する補助金を合理化し、段階的に廃止する」が、同年11月にAPEC首脳会議宣言で「必要不可欠なエネルギー・サービスを要する者にはこれを供与する必要性を認めつつも、無駄な消費を促すような化石燃料に対する補助金を中期的に合理化し、廃止することにコミットする」とされた。
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/g20/0909_seimei_ka.html
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_hatoyama/apec_09/apec_seicho_ka.html
    また、OECDとIEAは2011年4月に経済と環境の改善に向けた化石燃料補助金改革の提言を共同で行っている。
    http://www.oecd.org/document/15/0,3746,en_21571361_44315115_48804623_1_1_1_1,00.html
  9. 政府開発援助(ODA)を補完する新たな国際開発の資金創出制度で2002年3月にメキシコのモンテレイで開催された「開発資金に関する国際会議(モンテレイ会議)」において提案された。国際医療品購入ファシリティ(UNITAID)、予防接種のための国際金融ファシリティ(IFFIm)、航空券連帯税、通貨取引開発税などが該当する。
  10. 民間企業の報告サイクルに持続可能性情報を盛り込むことを義務付ける世界的な政策枠組みを推進するマルチステークホルダーの取り組みとして、2011年12月にステークホルダーフォーラムとVitae Civilisが、Dialogue on a Convention on Corporate Social Responsibility and Accountabilityというイニシアティブを開始した。本イニシアティブのAdvisory Boardには、国連環境計画ファイナンスイニシアティブ(UNEP-FI)、Global Reporting Initiative (GRI)、ISO 26000、Carbon Disclosure Projectなどの事務局の他、Friends of the Earth UKやCivicusなどのNGO、HSBCやAviva Investorsなどの金融機関の担当者が参加している。
    http://www.csradialogue2012.org/
  11. 1972年6月ストックホルムで開催された「国連人間環境会議」で提案され、同会議で採択された「人間環境宣言」及び「環境国際行動計画」を実施に移すための機関として設立された機関。オゾン層保護、有害廃棄物、海洋環境保護、水質保全、化学物質管理や重金属への対応、土壌の劣化の阻止、生物多様性の保護等多岐にわたる。
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/kikan/unep.html
  12. 開発の過程における人々や環境への不当な悪影響を防止・軽減することを目的として世界銀行において定められた政策。環境アセスメント、自然生息地、森林、病害虫管理、有形文化資源、非自発的住民移転、先住民族、ダムの安全性、国際水路、紛争地域、借入国システムの試験的活用の11政策から成り立っている。
    http://go.worldbank.org/7LW3X1OBX0
  13. 2011年11月に潘基文(バン・ギムン)国連事務総長が打ち出した国際的イニシアティブ。2030年までに、近代的なエネルギーサービスのユニバーサルアクセスの保証、エネルギー効率改善割合の倍増、全世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合の倍増を実現することを目的としている。
    http://www.sustainableenergyforall.org/

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