伊藤氏:
時間が少なくなってしまいましたので、最後にまとめとしてお一人ずつお願い致します。
小林氏:
いろいろと勉強させていただき、また意見も述べさせていただいたので、特に付け加えることはない。91年に寺西先生と勉強会を始めた頃からすると、隔世の感がする。必ずや地球の使用料をきちんと負担できる経済、国民生活を作らなければいけない。環境税がもし導入となれば、課税の仕方も使い方の面でも、国民が主人公になる経済社会作りの試金石となるだろうと思っている。ちなみにアンケートでは、環境税の目的税化の支持が国民にも産業界にも多いというのが事実である。しかし、透明性の確保、課税や使い方の議論はこれから大いにしていきたいと思う。
中川氏:
議論の段階から、実際に如何に導入するか、という戦略論を議論する段階に来ていることをつくづく実感している。私なりに整理すれば、国家戦略としてアメリカを引き込む必要がやはりある。でないと産業界がいつまでも腰が引けたままだろう。それから地方へ権限委譲、財源移譲し、その中から知恵を出していく方法があろう。また、納税者が納得できる使い途を行えるのは、納税者に一番近い地方政府だろう。国会議員の私がこんなことを言ってはいけないのだろうが、実際ドイツでも地方政府がしっかりしている。地方を積極的に巻き込んでいくことが環境省に必要ではないか。タバコ税で健康への害と社会的コストという点から値上げが理論づけられるように、国民が納得するような大義名分をNGOの皆さんと一緒に作っていければと思う。一緒にがんばりましょう、というメッセージを最後に送らせていただく。
中村氏:
環境と経済の理想的な調和となると、「いらないものは作らない・運ばない」という原則があると思う。つまり、経済の基本的な姿勢として節約倹約を美徳とするのか、浪費を美徳とするのか、が今一番重要だと思っている。みどりの会議のスローガンはスロー・スモール・シンプルの3Sである。これを常に行動に当てはめていくと何が重要なのかがわかってくる。これからはそういう時代になる。炭素税というのは、第一に無駄を省かせることの重要さでもって必要である。次に免税などを考えるときも、どういう削減を行ったかが重要で、高度な機械や排出量削減努力というよりも、そういうものを使わず、雇用を促進した、つまりその部分を人手で行った、というところに振り分けるのも一つの方向性だと考えている。
有田氏:
今日は透明性とか話し合いとか、そこのところを私は伝えたかった。免税など、細かい点で思うところはあるが、今の時点で一番怖いと思うのは、専門家やNGOなどの研究者の間では「議論はほぼし尽くした」と思っているかもしれない点。消費者の間では議論がまだであり、制度に透明性が欠けていたり、押し付けられたりすれば、消費者団体は頭では必要だとわかってはいたとしても最初に反対をすると思う。そうしたら良い制度も導入されなくなるという懸念があるので、私は今後いろいろな消費者団体と、環境税に関する勉強会を開き、議論もしていくべきだと思っており、そこでお力を貸していただきたい。とにかく、説得ではなく、納得するためのコミュニケーションをとるべきだと考えている。
寺西氏:
私のいう環境税制導入への一番のポイントは、明快でわかりやすく、誰もが納得する、そういう税制の基本理念や性格をどう打ち出していけるか、ということに尽きると思う。とくに、環境に良いことは思い切って減税して、環境に悪いことは思い切って増税しましょう、という新しい時代の税制改革の基本理念をきちんと出すことが必要だ。この点でドイツのやり方はすごく参考になる。ドイツはいろいろな政策パッケージのなかで、たとえばガソリン1リットルあたり6ペニヒ(30円から40円)の環境課税を行っており、これは日本の環境省案の15倍から20倍である。もちろん、一時的にはものすごく大変になことにとになるが、制度の工夫でどうにでもなる。例えば激減緩和措置や基礎控除の方式など、税制の技術を組み合わせれば、基本理念に対して整合的な制度も可能である。要は、国民も産業も納得させることができる税制の基本理念を示すことが重要だろう。
環境基本法の22条には、環境税制導入の法的根拠が書き込まれている。その但し書では、「国民な理解」が必要とされているので、これからのプロセスでは、より透明性が高い公開の議論を積み上げていかなければならない。これは、遠回りに思えるが、国民的合意を得るためには、結局、それが近道だと思う。
また、昨年末の税調答申の中に「環境税は積極的に検討する」という一文が入っている。今の政府税調の会長は、当初から環境税検討会の座長をしていた石弘光教授であり、彼は環境税派を自認しているから、今後の税制改正において環境の観点からの改革論をきちんと入れていく仕掛けをぜひ考えて欲しい。そういうプロセスを積み上げていくことで、おそらく2〜3年のうちに「環境税制が必要」という世論もできあがっていくのではないか。
足立:
小林さんは環境省の環境税のエースであるから、環境省が本気だと、私たちは期待している。田端さんも、与党という立場でありながら私案を作っていらっしゃったという点で重要。中川さんは「民主党案の改正案を作る」とおっしゃっている。中村さんも国民も高い税率を覚悟しないとだめだ、とあえておっしゃっている。今回はお呼びしなかったが、環境省以外の省庁の方々、他の政党の議員の方々にも本気で環境税に取り組んでいる方もいるので、今後はそのような方々にもこのような場で意見を述べていただきたいと考えている。
それとともに、有田さんのおっしゃるような国民全体での議論も大事であり、気候ネットワークの『炭素税って何だろう』と題したパンフレットを携えて各地で勉強会を行う、あるいはわかりやすい本を作る、などを考えている。さらにアメリカあるいは欧州と連携した活動も、政府任せにせずに我々が行っていかなければならない。また、我々NGOが常に良い案を示す責務がある、と考えているが、知恵が足りない部分もあるので「一緒にやっていこう」という方がいらっしゃれば、ぜひご一緒に議論に加わっていただきたい。
伊藤氏:
昨年もJACSESのセミナーで司会をしたが、その一年前と比較しても格段の進歩があると思う。そこで理念だけを議論するのではなく、"制度設計に現れた理念"を議論していただきたい。多くの団体/立場でも具体的な制度設計をして、批判をしたとしても全否定はせず、互いの良い部分を吸収しあって議論を深めていくべきだろう。
今日の話の中で、温暖化対策税の導入は不可避ということであったが、おかしな制度にならないように、具体的な制度設計案を基にした議論が活発に行われれば、良い方向に進んでいくと思う。
今日は年度末の平日で雨も降る中にも関わらずご来場いただき、また夜遅くまでご清聴いただき、ありがとうございました。
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