2012年6月20日〜22日、ブラジルのリオデジャネイロにおいて、「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」
*1が開催される。リオ+20は、1992年にリオデジャネイロで開催された「国連環境開発会議(地球サミット)」 *2から20年後、そして2002年に南アフリカのヨハネスブルクで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)」*3
から10年後の国連会議として注目されている。
リオデジャネイロでは、国連の本会議と並行して各種サイドイベント、キャパシティ・ビルディング・イベント*4 、ブース出展が行われる他、市民団体主催のピープルズサミット*5
、持続可能性を目指す自治体協議体(ICLEI)世界大会2012 *6 、ビジネスセクター主催のコーポレート・サステナビリティ・フォーラム
*7などが同時並行で開催される予定である。
リオ+20の目的は、以下の通り定められている。
- 持続可能な開発に関する新たな政治的コミットメントを確保すること
- 持続可能な開発に関する主要なサミットの成果の実施における現在までの進展及び残されたギャップを評価すること
- 新しい又は出現しつつある課題を扱うこと
また、リオ+20のテーマとしては、以下が示されている。
- 持続可能な開発及び貧困根絶の文脈におけるグリーンエコノミー*8
- 持続可能な開発のための制度的枠組み
ただ、交渉中の成果文書案では、課題別のセクションが設けられており、必ずしも上記の2テーマに限定されてはいない状況である。
なお、1992年に地球サミットで採択された行動計画「アジェンダ21」 *9と2002年にヨハネスブルクサミットで採択された「ヨハネスブルクサミット実施計画(JPOI)」
*10の包括的なレビューは、2016年〜2017年にかけての第24会期持続可能な開発委員会(CSD 24) *11で行われることになっている。リオ+20の準備プロセスにおいても、アジェンダ21やヨハネスブルクサミット実施計画(JPOI)の包括的なレビューは行われておらず、新しい政治的コミットメントや計画を策定する上で、やや整合性の欠いたプロセスとなっている点は否めない。
参考:国連人間環境会議(ストックホルム会議)からリオ+20までの道のり
- 1972年:国連人間環境会議(ストックホルム会議)が開催。人間環境宣言が採択。国連環境計画(UNEP)が設立。廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約(ロンドン条約)が採択。
- 1973年:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関するワシントン条約が採択。
- 1983年:国際熱帯木材協定が採択
- 1984年:環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)設置。
- 1985年:オゾン層保護に関するウィーン条約が採択。
- 1986年:国際熱帯木材機関(ITTO)が設立。
- 1987年:環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)が最終報告書「Our Common Future(ブルントラント報告)」
*12を発表。オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書が採択。
- 1988年:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)設立。
- 1989年:有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約が採択。
- 1992年:ブラジルのリオデジャネイロで国連環境開発会議(通称:地球サミット)が開催。環境と開発に関するリオ宣言採択、アジェンダ21採択、森林に関する原則採択、気候変動枠組み条約署名(条約は地球サミット直前に採択)、生物多様性条約署名(条約は地球サミット直前に採択)が行われた。
- 1993年:アジェンダ21に基づいて持続可能な開発委員会(CSD)が設置。
- 1994年:砂漠化対処条約が採択。国際熱帯木材協定(新協定)が採択。小島嶼開発途上国の持続可能な開発に関する国際会議にて「バルバドス行動計画」が採択。
- 1996年:環境マネジメントシステムの国際規格ISO 14000発行開始。廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約(ロンドン条約)の1996年議定書が採択。
- 1997年:国連環境開発特別総会(UNGASS、リオ+5)にてアジェンダ21の一層の実施のための計画を採択。第三回気候変動枠組み条約締約国会議にて京都議定書が採択。企業のサステナビリティ・レポーティングの国際基準であるGlobal
Reporting Initiativeが設立。
- 1998年:国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約が採択
- 1999年:コフィ・アナン国連事務総長が国連グローバルコンパクトを提唱。
- 2000年:国連ミレニアム・サミットにて国連ミレニアム宣言が採択。生物多様性条約特別締約国会議再開会合(モントリオール)にてカルタヘナ議定書が採択。
- 2001年:残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約が採択。アフリカ統一機構首脳会議にて「新アフリカ・イニシアティブ」が採択。後にアフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)へ改称。
- 2002年:持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)が開催。行動計画として「持続可能な開発に関する世界首脳会議実施計画(JPOI)」が採択。開発資金国際会議(モンテレー会議)にてモンテレー合意を採択。
- 2003年:内陸開発途上国(LLDC)の開発に関するアルマティ行動計画が策定。
- 2005年:援助効果向上に関するパリ宣言を採択。国連持続可能な開発のための教育の10年(UNDESD)開始。国連防災世界会議にて兵庫行動の枠組み2005-2015が採択。
- 2008年:援助効果向上に関するアクラ行動計画を採択。国連環境計画(UNEP)がグリーンエコノミー・イニシアティブ
*13を開始。
- 2010年:生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書が採択。社会的責任の国際規格ISO
26000の発行開始。
- 2011年:第4回援助効果向上に関するハイレベル・フォーラム(釜山)にて成果文書を合意。
- 2012年:国連持続可能な開発会議(通称:リオ+20)が開催。
脚注:
- 英語名はUnited Nations Conference on Sustainable Development
(UNCSD)で、国連の公式ウェブサイトは下記の通り。
http://www.uncsd2012.org/rio20/index.html
- 1992年6月3〜14日にブラジルのリオデジャネイロで開催された環境と開発に関する国連会議。地球温暖化、酸性雨等顕在化する地球環境問題を人類共通の課題と位置付け、「持続可能な開発」という理念の下に環境と開発の両立を目指して開催されたもので、172ヶ国の政府代表、国際機関、NGOが参加。「環境と開発に関するリオ宣言」の採択、「アジェンダ21」の採択、「森林に関する原則」の採択、気候変動枠組み条約の署名、生物多様性条約の署名などが行われた。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/unced1992.html
- 2002年8月26日〜9月4日に南アフリカのヨハネスブルクで開催された持続可能な開発に関する首脳級の国連会議。地球サミットから10年目にあたって、アジェンダ21等の計画の見直しや新たに生じた課題等について議論するため開催された。行動計画として「持続可能な開発に関する世界首脳会議実施計画(JPOI)」が採択された。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/wssd/index.html
- SD-Learningと題する持続可能な開発に関するキャパシティ・ビルディング・イベントが開催される予定。内容は、オンライン投票によって決定することになっている。
http://www.uncsd2012.org/rio20/meetings_sdlearning.html
- ピープルズサミットの詳細は下記に掲載される予定。
http://rio20.net/en/
- 持続可能性を目指す自治体協議体(ICLEI)世界大会2012については下記参照。
http://www.iclei.org/index.php?id=12648
- コーポレート・サステナビリティ・フォーラムについては下記参照。
http://csf.compact4rio.org/events/rio-20-corporate-sustainability-forum/event-summary-251b87a2deaa4e56a3e00ca1d66e5bfd.aspx
- グリーンエコノミーには様々な定義がある。例えば、国連環境計画(UNEP)では、「経済のグリーン化とは、自然・人的・経済的資本投資に対するより良いリターンを得るために、ビジネスやインフラを再構築するプロセスであり、同時に温室効果ガスの排出抑制や天然資源の低利用、廃棄物の排出削減や社会的分裂の減少を促すものである」と定義している。いずれにしても、リオ+20準備プロセスにおいては、共通の定義を採用することはせずに成果文書の交渉が行われている。「持続可能な開発及び貧困根絶の文脈における」という文言が加わった背景には、開発や貧困削減を重視したい途上国への配慮があったと推察される。
http://www.mri.co.jp/SERVICE/rio20/rio20_201107.pdf
- 1992年の地球サミットで採択された文書のひとつで、持続可能な開発を実現するための具体的な行動計画である。4部構成全40章からなり英文で500ページにも及ぶ。第1部「社会的/経済的側面」、第2部「開発資源の保全と管理」、第3部「NGO、地方政府など主たるグループの役割の強化」、第4部「財源/技術などの実施手段」となっており、女性や貧困、人口、居住などの幅広い分野をカバーしている。
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=55
- 2002年のヨハネスブルクサミットで採択された文書で、アジェンダ21の更なる実施のための具体的な行動計画である。実施計画は11部で構成されており、第1部「導入」、第2部「貧困撲滅」、第3部「持続可能でない生産消費形態の変更」、第4部「経済及び社会開発の基礎となる天然資源の保護と管理」、第5部「グローバル化する世界における持続可能な開発」、第6部「保健と持続可能な開発」、第7部「小島嶼国における持続可能な開発」、第8部「アフリカにおける持続可能な開発」、第9部「その他の地域的イニシアティブ」、第10部「実施の手段」、第11部「持続可能な開発のための制度的枠組み」となっている。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/wssd/pdfs/wssd_sjk.pdf
- 持続可能な開発委員会(CSD)は、アジェンダ21において設置が提起され。1993年に設立された。主な役割として、アジェンダ21の実施進捗状況のレビュー・評価・より一層の実施促進、部門横断的な側面に焦点を当て、改善された政策統合のための場の提供、アジェンダ21の実施に関する新たな挑戦課題と機会への取り組みが規定されている。2年ごとに会期を設け、複数のテーマに限定して集中的に議論が行われている。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/kikan/csd_index.html
- ブルントラント報告では、持続可能な開発を「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」と定義した。
- グリーンエコノミーレポート及び関連文書の作成、グリーンエコノミー実現を目指す国に対するアドバイサリーサービスの提供、NGO・企業・他の国連機関によるグリーンエコノミー実現のための実施に関する調査を行うために国連環境計画(UNEP)が開始したイニシアティブ。
http://www.unep.org/greeneconomy
- リオ+20の準備プロセスは、以下に詳細が掲載されている。
http://www.uncsd2012.org/rio20/index.php?page=view&type=12&nr=281&menu=32
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