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CDMの現状と課題【詳細】

空太陽写真

■CDMプロジェクトの登録状況、ホスト国
■CDMプロジェクトの種類
■CDMプロジェクトの質
■CDMクレジット市場の現状

■CDMプロジェクトの登録状況、ホスト国

国連に登録されているCDMプロジェクトの件数は2009年7月末までに1,751件、2009年(10月-12月)の累積CER発行量は約3.6億トンとなっています。

CDMプロジェクト/CERの供給で最も多くを占めるのは、中国、インドです。2009年7月末の全登録件数1,751件のうち、600件(33%)が中国で、インドが449件(26%)といった状況です。

CDMのホスト国(プロジェクトが行われる国)には偏りがあるということがいえます。特に、アフリカ諸国等におけるプロジェクト件数が少なく、地域密着型の小規模プロジェクトも進みにくいのが現状です【CDMの偏在状況とその対策についてはJACSES書籍 『カーボン・マーケットとCDM』「第3章:CDMのプロジェクト地域とタイプの偏在 井筒沙美(ナットソース・ジャパン)」参照】

データは「IGES CDMプロジェクトデータ分析」「IGES CDMプロジェクトデータベース」による

■CDMプロジェクトの種類

CDMプロジェクトは、フロン破壊や小型水力ダムプロジェクト、植林や森林管理などを行うことでクレジットを得る、いわゆる吸収源プロジェクト、トウモロコシやサトウキビなどのバイオマスを燃料とするプロジェクトなど、多様なプロジェクトがあります。

このように、多様なプロジェクトから創出されたクレジットが排出量取引市場で取引されています。CDMプロジェクトが登録されるようになった2005年頃は、フロン破壊やメタン回収などの総投資コストが小さくて削減量が大きなプロジェクトが多くを占めていました。しかし、こうしたプロジェクトが開発され尽くすと、再生可能エネルギーや省エネプロジェクトが増え始めました。

森林プロジェクトなどのように、CDMに期待されている持続可能な発展や温暖化対策の面で重要であっても、わずかしか動いていないプロジェクトもあります。

■CDMプロジェクトの質

CO2の排出抑制量は同じであっても、プロジェクトが実施される地域の発展に対する貢献等の効果はプロジェクトによって異なります。そのため、クレジットには、質の違いが生じると考えられます。

「温室効果ガスの排出抑制」と「途上国の持続可能な発展への貢献」の両方を実現するために、プロジェクトの種類やクレジットが持つ「質」にこだわるべきという考えもあります。実際に高価格・高品質のプレミアム商品が市場に出始めています【詳細はJACSES書籍 『カーボン・マーケットとCDM』「第4章:ゴールド・スタンダードの有効性と課題」参照】

■CDMクレジット市場の現状

CERの取引規模

世界銀行の報告「State and Trends of the Carbon Market 2009」 によると、2008年の排出量取引市場におけるクレジットの取引規模は、世界で合わせて約48億トン(CO2換算)となっています。金額にすると約1,263億米ドルの取引です。

そのうち、CER取引市場では、全排出量取引市場の約30%に当たる約15億トン(CO2換算)のCERが取引されました。

ここでいう「購入量/取引量」とは、「購入契約締結量」のことです。CERの購入契約は、クレジットが発行される前に締結される「将来発生するであろうクレジットの契約(先渡し契約)」もあります。そのため、「購入量/取引量」には、CDMとしてまだ登録されていないプロジェクトからのクレジットがカウントされています。

CERの需要者の動向

世界銀行によると、プライマリーCER及びERU(共同実施:JI*由来のクレジット)の購入量が最も多かった国は、英国でした(図参照)。日本は、英国、イタリアについで3番目の買い手となっています(2008年)。

*Joint Implementation:これは、先進国が、別の先進国において温室効果ガス削減プロジェクトを行い、削減分をクレジットとして自国に持ち帰り、京都議定書で定められた目標達成に使用することができる制度。

買い手「State and Trends of the Carbon Market 2009」

図 Primary CDM&JI Buyers
(as shares of volumes purchased, vintages up to 2012)
出所:「State and Trends of the Carbon Market 2009」

英国の購入量の多さは、最終需要家のみでなく、世界各国を相手にクレジットの売買を行うトレーダーなどが存在することが影響しています。また、2005年に開始されたEU-ETS(EU域内排出量取引制度)では、目標達成のためにCERの利用が認められています。そのことも、英国をはじめとする欧州の買い手がCERの購入に積極的になったと推察されます。

日本では、2008年からの排出量取引の国内統合市場の試行的実施でCERの利用が認められています。また、カーボン・オフセット**などにもCERが利用されています。

**カーボン・オフセット:日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方(環境省サイトより

こうしてCERの取引が行われる一方で、CDMに関しては、多くの課題や批判、懸念が指摘されています。特に、CDM実施によって発生するクレジットの質と量を巡って様々な議論があります。

また、CERの大量購入国である日本の国民、企業は、CDMについて十分に理解するために、CDMの課題や批判にも理解を深める必要もあります。CDMの課題/CDMと国際協力に関するJACSESの現状分析・提案についてもっとみてみる

CERの需給と価格

CERの価格は、これまでに、CDM理事会の審査の状況、金融危機や不況などの経済状況の変化、東欧諸国からのAAU*などその他のクレジットの供給状況などによって需要が変化することで、変動しています。

これらのことからもわかるように、様々な状況にクレジット価格が影響を受けるため、需給関係に関する予側、価格の予側は非常に難しいといえます。

*AAU(Assigned Amount Units):初期割当量のこと。先進国に割り当てられる排出枠


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担当: 足立治郎

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