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国内政策 国内排出量取引
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■国内/域内排出量取引制度

国内/域内排出量取引制度は、国内/地域内の排出削減主体が市場で排出量を取引する制度です。EUでは、2005年からEU域内排出量取引制度を導入し、米国でも、カリフォルニア州等の州レベルで導入が進み 、オバマ政権も国レベルでの導入を表明しています。

欧米で導入が進んでいるものは、政府が企業/事業者に排出枠(キャップ)を割り当て、トレード(取引)も認める、キャップ&トレード型の制度です。キャップ&トレード型排出量取引は、達成したい目標を最初に定め、その分の排出枠だけを発行するため、排出量をコントロールできます。この点は、炭素税(環境税)にはない利点です。

ただし、排出量の割り当ての過程で、不公平が生じたり、過剰に緩い削減目標が設定される可能性もあります。実際、EU の排出量取引制度(EU−ETS)は、「甘い」キャップ設定がなされました (ただし、EU は今後、より厳しいキャップをかけていく方針です)。

■キャップ&トレード型排出量取引制度の排出枠の配分方式

排出枠を割り当てる方法には、表「キャップ&トレード型排出量取引制度の排出枠の配分方式」に示すように3種類があります。

グランドファザリング
(無償配分)

排出枠の交付を受ける主体の過去の特定年、あるいは特定期間における排出実績を基に排出枠を交付。
利点:「キャップを予測しやすい」など
欠点:「公平なキャップ決定が難しい」など

ベンチマーク
(無償配分)
産業ごとに標準的な生産方法を下に基準排出量を定め排出枠を配分。
利点:「うまく策定できれば公平感が得られやすい」など
欠点:「全産業について策定することは困難」など
オークション
(有償配分)
政府が排出枠を公開入札で販売。
利点:「政府財源が得られる」など
欠点:「費用負担に抵抗がある」など

表 キャップ&トレード型排出量取引制度の排出枠の配分方式

EUはこれまで、主に、過去の実績をもとに排出枠を決める「グランドファザリング」で事業者等に排出枠を割り当てています。しかし、割り当てられた排出枠が大きく、排出削減効果が乏しい上、排出枠の割り当ての公平性が問題となっています。こうした課題を解決するため、EUは、今後はオークションを主にしよう、との方針です。

■ 日本における「国内排出量取引試行的実施」

「国内排出量取引試行的実施」とは、2008年に政府与党が開始したものです。この試行は、欧米で導入が進展する、政府が企業/事業者のキャップを割り当てるキャップ&トレード型の制度と異なり、企業が自主的に目標を設定し、目標達成のために排出枠の取引も可能とするものとなりました。

「企業/事業者」ごとに目標値を設定することとしています(ただし、鉄鋼および自動車は現在業界単位での目標設定を例外として認めています)。

政府は、企業が設定した目標をただ受け入れるのでなく、一定の水準に照らし審査・確認を行っています。2008年度目標の審査では、一定水準に満たない一部企業が目標を取り下げました。国内統合市場によって、海外の排出枠(京都クレジット)活用に加え、企業/事業者は、国内企業間排出量取引と国内CDM制度の活用も可能となりました。

■ 国内排出量取引制度導入の課題

国内排出量取引制度の導入についての検討が盛んになされていますが、その制度構築には、いくつかの課題が指摘できます。

◇排出量の割り当ての過程での不公平、過剰に緩い削減目標が設定される可能性

◇過度のマネーゲーム・投機行動による弊害の可能性
過度のマネーゲーム・投機行動金融危機発の世界経済不況で、倒産する企業も続出しています。安易な排出量取引市場( カーボン・マーケット)の創設は、排出量取引・投機による利益を受ける人々がいる一方、環境技術の開発者でも、市場でうまく立ち回れない場合、 大きな損害を受ける可能性も危惧されます。

◇企業の国際競争力に対する影響
他国の政府が企業に設定する排出枠より厳しい排出枠を日本政府が国内企業に設定すると、海外企業以上の負担を強い、公平な国際競争を損ね、日本企業の国際競争力を不当な形で弱めてしまう可能性があります。

政策として国内排出量取引制度を導入する場合、国内排出量取引制度の抱える課題を克服する効果的で公正な仕組み、特にキャップ設定の方法を構築・提示する責務があります。

担当: 足立治郎
 


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